風、空、きみ

talk to myself

Archive for October 10th, 2009

Midnight Zoo #28

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ーわたしが希望して、わたしが存在しているわけじゃないのよ。
 航はだまって頷きながら、その女性の次の言葉を待った。
ーあの子も、そう昼間のあの子も希望してわたしを生み出したわけじゃないし。
 でも、窓ガラスに映るその女性の表情は活き活きとしているように、感じた。
ー母親の淫らな、そうね、あのときは淫らなんて思いもよらなかったんだろうな。怖くって自分も襲われちゃうって感覚が、父親に助けを求めたのね。
 ため息が聞こえてくるようだった。
ーそしてわたしが父親のもとへ飛んだ。
ーちがうわ。
ーまだ、そのときはわたしじゃなかった。
ーあの子の意識が父親の場所に飛んだのよ。
ーあのときはまだわたしはあの子の意識の中にいたのか。うーん、よく分らないわ。
ーただ、あの子はさみしくなると、ひとりでいることに押しつぶされそうになるとその度に、会いたい人に向けて意識を飛ばしだしたのね。意識を飛ばせば会いたい人に会えるってわかったから。時間を誰かと共有することで自分を救おうとしてね。
ーすごいことよ。さみしいって気持ちが意識を飛ばせるようにしたんだから。
ーそれを繰り返して、いつの間にか、それを楽しいと思うようになったのね。
ーそれがいいことだったのかはわたしにも分らないわ。
ーでも、その繰り返しがわたしを覚醒させたのかなぁ。
ーて言うか、覚醒って言うよりももうひとりのあの子が、あの子の寝入った後にその楽しいことを楽しみはじめた。
ーそれがわたし。
「でも、助けて欲しいとぼくに言ったんだよ」
 航は饒舌すぎるその女性に少し反論してみた。
ーそれはあの子。
ーもともとあの子が飛ばしている意識がやっていることを、わたしがやっているだけ。
「あの子の意識が今のきみだと」
 その問いかけにはその女性は答えなかった。
ーでもね、いろんなものを見ていると、思うのよ。
ーわたしだったらもっと積極的にいろんな人と話ができる。好きな人ができれば告白もしたいって思うじゃない。
ーだからわたしがあの子になるの。あの子がもう一歩だけ踏み出せなかった、その一歩をわたしだったらかるーく踏み出せるもの。
 ガラス窓の眼が光り、航は足元に爬虫類の肌の冷たさを感じた。
ーそう、わたしがあの子になって、するともうあの子はもういらないのよ。
ー存在そのものをわたしだけにする。
ーだってうじうじした性格なんて、うっとうしいだけじゃん。
ーそれに藤崎晴香がふたりもいたんじゃ、みんなが混乱するでしょ。
ーわたしがもっともっとあの子の人生を楽しいものに変えるの。
 ガラス窓の口元が笑っている。
ーあら?そのときはもうあの子の人生じゃなくて、わたしの人生ね。
ー皮肉なものねぇ。あの子の意識から生まれたわたしがあの子の人生を楽しいものにして、でもそのときにはあの子はもう楽しいってことが分らない。
ーふふふ。ね。
「でもさ」
 航は桜子から聞いた晴香の話を思い出し、ガラス窓に向って話しかけた。

(続く)

Written by ken1

2009/10/10 at 19:41

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after the typhoon

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after the typhoon

先日の台風のあと、めっきり秋らしくなりましたね。今にも太陽が雲の切れ間から出てきそうな朝でしたので、思わずパシャリ。

Written by ken1

2009/10/10 at 11:28

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