Archive for February 21st, 2010
tokyo tower, winter dusk
Midnight Zoo #37
ーねぇ、桜子さんがいなくなったら、どうなるの。
耳の奥に直接響いてくるような声が聞こえた。
ー航さんはどうなっちゃうのかな。
隣では瑛太とひなのが少しだけふたりの世界に入っている。
「えっなになに」
「だからね」
そんな小声の会話が左の耳に届く。
そして耳の奥、頭の中に聞こえてくるのはふたりとは違う静かな響きだった。
ーだって航さんは桜子さんに対してどこか距離があるように感じるもの。
航は目をつむって、ホットウィスキーから切り替えたマティーニをそっと口に運ぶ。
ーそこのふたりのような他愛もないじゃれあい、あそこのテーブルのカップルのような恋人たちの空気、そんなのが航さんと桜子さんには感じられない。
そうかも知れないな、航は桜子との関係を少し思い出してみた。
気づいたらそばにいた。
会いたくなったら、時間に関係なく会いに行っている。
部屋の鍵の場所、冷蔵庫の中身、シャワーの使い方、何一つひっかかることなく自然にそばにある。
楽しいこと、つらいこと、何も具体的な話を聞かなくても、その日のキスですべてがわかる。
居て欲しいとき、気づいたらもうそばにいる。
じゃれあわない、醸し出す空気はない。
でも、あうんの呼吸。
自然に話した内容が、そっと差し出した手が、いつも重なり合っていた。
ラブラブのカップルと比較すると、みんなは桜子と自分の関係がどこか距離のあるように写るのか。
ーそんなふうに桜子さんも思っているのかな。
航は静かに目を開けた。
ーほんとはもっと、そこのふたりのようにたまにはじゃれあいたいんじゃないのかな。
「今さら」
航はほとんど唇を動かさずに、その響きに応えた。
ーだって今までそんな話をしたことないでしょ、桜子さんと。
瑛太とひなのはすでにふたりの世界に入っていた。
航にはふたりの会話が遠い彼方でされているように、聞き取れない。
ー桜子さんはしたがっているかも知れないじゃん。
航がカウンターでうたた寝をしている客の隣に腰かけている女性に顔を向けると、その女性はじっと航を見つめていた。
ーわたしがここにいるって、分ってたくせに。
立ち上がったその女性は半透明な身体で、そして彼女の動きに誰も気をとめる者はいなかった。まるでその女性と航の間だけ時が動き、みんなの時は止まっているかのようだった。
ー航さんはどうなったゃうのかな。
「晴香は桜子に何かするつもりなのか」
ーわたしは何もしないわ。したとしても何も言わない。きっとすぐ航さんはわたしを疑うんだろうね。でもわたしは何もしない、ほんとよ。だって航さんが桜子さんに何かしているんだから。そうなんだよ。
「え」
ーもうしているんだよ。今ここに、いつもと違うお店で、3人で会っている事自体、航さんはすべてを壊し始めているんだから。
(続く)
my Barnack IIIf, maybe 1951-1952
さほど運賃は変わらないのに、USPS Priority Mail InternationalだとUSPS Express Mail Internationalよりも一週間余分にかかってしまった。次回からはExpressにしよっと。届いたIIIfで24枚試撮してみて動きはほぼ完璧、だけど距離計の二重像が薄いので、距離計内部のハーフミラーを交換することにしました。まぁ60歳弱のIIIfですからそんなもんでしょ。いつもの大分カメラ修理センターのおじいさんと電話で雑談・スローシャッター時にたまに発生するねばっこい動き対処も含めて交渉完了。今はクロネコの回収待ち。ふたつの丸っこい窓がかわゆいでしょ。

