Archive for March 22nd, 2010
X-MEN ORIGINS: WOLVERINE
Midnight Zoo #39
ーそっか。
3杯目のジンをコーラで割りながら、桜子はひらめいたように足りない何かを思い当たった。
ー週末なのに、今日は誰からも誘い のメールがなかったんだ。
最近たまに会うひなのからもなければ、晴香からもない。当然瑛太からもないし、そして何より航から何の一言もメールが ない。
ーそりゃあさぁ、ないってこともあるだろうけど。
でも、今夜に限っては何かすんなりそうとは思えない。
ーいつもの週末と 何がどう違うって、自分にも説明できないけど。
もしかしたらコーラ割りのジンのせいかも知れないと桜子は思ったが、でも一度何か違和感を覚えて しまうと、今度はそれを払拭する理由を探してしまう。
そうこうして時間が経つと、そう思った理由よりも払拭する理由を思いつかず、ますます払拭 できないとなると、やはりそれはそう言うことであり、今夜誘いのメールが誰からも来ないのはおかしいと思い込んでしまう。そして、単におかしいと思い込む だけではなく、その思いは桜子を不安の塊に変える。
ーおかしいよね、変よね、絶対。
グラスと氷に付いている泡を見つめながら、桜子は不 安なことをあえて自分に言い聞かせる。グラスを手に取ると、そのひんやり感がまた桜子を不安に陥れる。
それでも桜子はいつもの3人にメールを打 つのをためらっていた。
打とうかどうか迷う以前に、メールを打つと言う行為は今、桜子の選択肢になく、逆にメールはしてはいけない行為に位置づ けられていた。それこそ理由なんてなく、あるとすれば今夜のこの状況、ひとりでつつく総菜とコーラ割りジンが作り出す妙なプライドが自分からメールを打つ 行為を否定しているのだろう。
すると不安を解消する術はもはやなく、ただひとり部屋の中、総菜を口に運びグラスを傾けて、やがて不安がそっと引 いていくのを、何事もなかったように朝になり不安が今夜の自分の中で笑い話に変わるのを、ひたすらジンとそして時間とともに待つしかなかった。
夜中の3時になろうとする頃には、桜子は自分の涙がテーブルを濡らしているを見つめていた。
「可笑しいよね」
今度は声に出して言ってみ た。
そして頬杖をつき、濡れた頬を包んでみても、何も変わらなかった。
ジンはコーラと氷で薄まり、グラスの下は水たまりのように水滴 が溜まっている。
「誰も何もしてくれないんじゃなくって」
桜子は鼻を一回すすりあげた。
「ひとりでいるのを悲壮っぽく演出して いるだけ」
テーブルの涙を人さし指で拭きとった。
「ばかみたい」
ーばかみたいじゃないよ。
その言葉に桜子は半信半疑 の思いで、テーブルから顔を上げた。
ーだから前に言わなかったかな。
テーブルの向かい側には、半透明の晴香が優しく微笑んでいた。
(続く)
