Archive for the ‘kiss’ Category
きみのもしもし #222
「どうしてそんなにバクバク食べるかなぁ」
ーえっ。
「せっかく買って来たのに、とっても時間をかけて選んでさ」
ぼくが右手でつまんでいるチョコにきみもぼくも視線を移す。
「一気に食べきって、なくなっちゃいそうでさぁ」
右手のチョコは行き場を失った。
「ありがたみって言うか。気持ち込めて渡したんだから、気持ち込めて食べてくんないとなぁ」
宙に浮いた右手のチョコ。
「もしもしっ、手に取ったんだから食べなさいよ。わたしの気持ちに感謝して食べなさいっ」
怖いなぁ。
でも、そんだけ気持ちがこもってるんだよね。
心して味わいます。
ありがとう。
きみのもしもし #221
「来てくれたんだ」
ドアの隙間からきみが言う。
「いいからチェーン外して中に入れてもらえないかな」
ぼくはスーパーのビニール袋を、きみの目の高さに持ち上げてみる。
チェーンが外され、ドアは開いたが、
きみは首を横に振る。
「だめだよ、入っちゃ、うつっちゃうもん」
大丈夫だよ、とぼくも首を横に振る。
そして、きみの手をとり、ほっぺにキスをする。
「もしもし、ほんとうつるんだから」
「そのときはそのときさ」
ぼくは後ろ手にドアを閉めた。
きみのもしもし #220
「お散歩いこっ」
今、ふたりで公園から戻って来たばかり。
ぽかぽかだった陽気も、風が出て来て少し肌寒さを感じたから。
ー風邪引くとよくないものね。
そう言って、温かい珈琲を求めて、でも途中のカフェにも立ち寄らずぼくんちまで戻って来たはず。
「また行くのかな」
きみはにっこり笑って首を横に振る。
「また一緒に行けるかな」
「行けるよ」
きみは少し考えて、
「もしもし、あのね。おじいちゃん、おばあちゃんになっても一緒にお散歩行けるかな」
ぼくも少し考えて、
「行けるよ。きみさえよければ」
ふたりの間に少し間が空いた。
「まっいっか」
「まぁいいじゃん」
とにかくまた散歩に行こうね。
きみのもしもし #219
「凍えるねぇ」
「もう凍えてるよ」
きみとふたりで予約したお店を探す表参道。
かんたんに見つかるはずのお店が見つからない。
「お店に電話してみよっか」
「も少しこのまま探そ」
きみが身体をすり寄せ、腕を組んでくる。
重なった腕の辺りが温かい。
まぁ確かに悪くもないな。
「もしもし、ちゃんと探すんだよ」
ちょっと気を許したぼくに、
はなのあたまを赤くしたきみが白い息をかけてきた。
きみのもしもし #218
古いバーのカウンターできみとグラスを酌み交わす。
真新しいコートでぼくより5分遅れて到着したきみ。
寒いよねぇと両手をこすっている。
ナッツしか出てこないこのお店で、空きっ腹に直接ウイスキーを流し込む。
そこまでつきあう必要もないのに、同じものを注文するきみ。
酔いが回るのが少しだけ早いみたい。
薄明かりの中、ほんのりとピンクに染まったきみのほほ。
「もしもし、これからどうするつもりなの」
アルコールの分だけ艶っぽい仕草で、きみが5cmの距離で問いかける。
ーさてとどうしましょうかねぇ。
頼んだばっかりのお代わりがもどかしく思えた。