風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #565

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 毎年夏の花火を楽しみにしていたけど、
 今年から?今年だけ?今月になったこの花火大会。
 日没が早まった分、始まりも1時間早くなる。
「もしもし」
 時間を確認せずに遅刻したことに何か言われるかなと思ったが、
 きみは違うことで頭がいっぱいらしい。
「寒いよね」
 もう秋だからね。
「こんなに寒いのに、ほら」
 きみの視線の先には浴衣姿のお嬢さま方がいた。
「一人や二人じゃないのよ」
 冷たい空気にきみは少し身震いをする。
 みんな若いね。
「大人なわたしは首をひねってしまいます」
 そっか大人だものね。
 そんなきみはストールを巻きなおし、
 始まった打ち上げ花火に視線を移す。

Written by ken1

2018/10/14 at 15:56

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きみのもしもし #564

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ー当たっちゃった。
 きみから送られてきた写真には、
 ゼッケンの横に赤く大きく当たりのスタンプが押されていた。
ー完走したらもらえるそう。
 じゃあ、是が非でも頑張らないとね。
ーでも何がもらえるのかしら。
 4時間半後のお楽しみ、だね。
 きみはこれから久しぶりのフルマラソン。
 そろそろスタートの合図が響く。
ーもしもし、完走したらあなたからも何かあるのかしら。
 そうだね、いいよ。
 また今回も応援には行けない。
 でも、きみはきっと完走することだろう。
 秋晴れの今日、体を動かすにはちょうど良い気候。
 朗報、お待ちしています。
 でも、何が当たるんだろうねぇ。
 ぼくまで気になってしようがない。

Written by ken1

2018/10/08 at 01:32

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きみのもしもし #563

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 きみからランチのお誘いがあった。
 待ち合わせはそのお店。
 ぼくがお店に着くと、きみはニコニコと待っていた。
 テーブルには真新しいメニューが広げてあり、
 きみはその中のひとつを指さした。
「覚えてる?」
 そんな問いかけはずるいなぁと思いつつ、
 でも何もピンと来ない。
「もしもし、教えてあげる」
 きみは自慢げでもなく、ほんの少しだけ頬を染めて続けた。
「初めて一緒にランチをした場所はここ」
 え?
「そして、そのとき食べたのはこれ」
 え?
 当時のお店はすでになく、その場所には今はこのお店があり、
 ただ、当時から評判のよかったこのメニューだけは受け継がれているらしい。
 よくたどり着けたね。
 ぼくは素直に感心する。
 きみは素直に胸を張る。

Written by ken1

2018/09/30 at 23:41

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きみのもしもし #562

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 きみがひとりでお留守番をしている。

「どこに行くのかな」
 寝ぼけ眼のきみが、出かける前のぼくに問いかける。
 ちょっとMINIを飛ばしてくるよ。
「昨夜もその前も、ちゃんと寝てないでしょ」
 きみのあくびにつられて、ぼくまで大きく口を開ける。
 ねぇ女の子は大きな口を開けてあくびしちゃだめなんだよ。
「あなたの口癖ね」
 と、きみは笑う。そして続ける。
「運転気をつけてね」
 泊まりになるよ。
「こんな気がした」
 大丈夫かな。
「もしもし、ばかにしないでね」

 そんなきみから留守番の様子の写真が届いた。
 きみはまだベッドのなか。
 今日も寝ぼけ眼のきみがいた。

Written by ken1

2018/09/24 at 16:17

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きみのもしもし #561

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 きみと90分、話をした。
 そのお店でカウンター越しに向き合って。
 カフェで1時間や2時間、一緒に過ごすことは、よくあること。
 でも今日はずっと話をしていた。
 きみがずっと話していて、ぼくがずっと聞く。
 もしくはその逆。
 そうではなく、小さい子供のピンポンのように、
 大きな弧を描いて、ゆっくりと言葉を交換した。
 まだまだきみはぼくの知らないことだらけ。
「もしもし」
 きみはうれしそうに笑う。
「ずーと続きそうね、わたしたち」
 それについては否定も肯定もしないけど、
 ただ、これから先も、
 もっともっときみのことを知り続けたいと思った。

Written by ken1

2018/09/17 at 00:58

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きみのもしもし #560

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ー近くにいるのよ。
 うん、確かに近くだね。
ーでも今夜は私の時間。
 もちろん、ぼくもぼくの時間。
ーでも待ち人がまだ来ないの。少し遅れる見たい。
 同じだね。ぼくも今夜のお相手が少し遅れるそう。
ー飲んでるの?
 うん、飲みながらその人を待ってる。
ーもしもし。その人が来るまでお相手頼んでよいかしら。
 もちろん。きみの待ち人が早いか、ぼくのお相手が早いか。
ー赤ワインにしようかな。
 ぼくは今ビール。
ーじゃあ、ビールにする。
 少しだけ間があったかと思うと、
 きみから「かんぱーい」と写真付きのメッセージが届いた。
 こんな飲み方もあるんだな。
 ぼくは2杯目のビールを注文した。

Written by ken1

2018/09/09 at 17:54

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きみのもしもし #559

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 きみが寝息を立てている。
 ゆうべ、ぼくが寝るときにはきみはソファで何かを作っていた。
ーまだ寝ないの?
ー友だちに贈るプレゼントを作っているの。
 きみが隣に潜り込んできた時間をぼくは知らない。
 ぼくはベッドを抜け出し、朝食の用意をする。
 珈琲豆を挽く音はきみの眠りを妨げることになるだろう。
 珈琲は最後に、それもドリップパックを使うことにしよう。
 朝の音楽も今日はイアホンで聴くとしよう。
 食器の当たる音にも注意を払い、
 ぼくはサラダとヨーグルトを盛り付ける。
 そうだな、パンは少し厚めに切っておこう、何となくそんな気分。
 ゆで卵なんてのもあると、きみは驚くかな。
 きみの目覚めたときの「もしもし」を楽しみに、
 ぼくは音の出ないメニューでふたり分の朝食を用意する。
 

Written by ken1

2018/09/02 at 18:16

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