風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #617

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 ゆっくりと、でも確実にぼくらは歳をとる。
 前向きに言葉を変えれば、歳を重ねると言うことか。
 物忘れも出てきて、身体のあちこちにガタが来る。
 今までのスピードで物事が処理できなくなって、
 自分自身でも焦ったくなる。困ったものだ。
 そんな話をきみにしていた。
 すると、きみはキョトンとしてぼくを見る。
ーもしもし。
 笑顔でぼくを見る。
ー歳をとることはそんな悪い事ばかりじゃないよ。
ーきっとそうじゃないよ。
ーいろんなものが見えてきて。
ーいろんなことに優しくなれて。
ーきっとそうだよ。
ー楽しみだなぁ。
 きみはおいしそうに珈琲に口をつける。

Written by ken1

2019/10/14 at 13:04

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #616

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「もしもし」
 始めにそう言ってから、きみはずっと話し続けている。
 途中で口を挟む隙もないほど、ずっと話し続けている。
 ぼくはとにかく、そんなきみから目を離さずに、
 そうだね。
 とだけ、時折り相槌を打つ。
 そしてたまに珈琲に口をつける。
 きっときみの珈琲もぬるくなっているだろうに、
 きみはそんなことにはお構いなしで、
 ずっと話し続けている。
 いくらでも、いつまでも、聞いていてあげよう。
 ぼくはまた相槌を打つ。

Written by ken1

2019/10/06 at 19:09

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #615

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 きみが話を聞いてと言ってきた。
 いいよ、いつでも聞くよ。
 ぼくは何の躊躇もなく返事を返す。
 きみがぼくを必要としているのなら、それに勝るものはない。
 今から会おうか。
 きみの返事が少し止まる。
ーやっぱりもう少し余裕ができたらにする。
 いいよ、いつでも、どうぞ。
ーもしもし。
 きみは少し迷っているのかな。
 今から会おうか。
ーうぅん、少し整理する。
 いろんな事があるものね。
 ぼくはいつでも大丈夫。
 だからいつでも連絡おくれ。
 そして、きみからありがとうのスタンプが届いた。

Written by ken1

2019/09/29 at 18:43

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #614

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 きみがぼくの名前をいつも以上に口にする。
「もしもし、あのね」
 そのあとに、ぼくの名前をくっつける。
 いつもだったら互いに「きみ」で呼んでいるのに。
 今夜のきみは、ぼくの名前をきちんとくっつける。
 そのことに気づいたけど、ぼくまできみの名前を口にするのは、
 ちょっと気恥ずかしい。申し訳ないけどさ。
 そんなことは気にもしていない今夜のきみは、
 ひとつのフレーズを話すのに、ぼくの名前を必ず一回は口にする。
 お酒も入って、いつもより少し饒舌な今夜のきみ。
 いったい今夜は何回名前を呼ばれるんだろう。
 ぼくはなんだかとってもくすぐったい。
 うれしいんだけどさ。

Written by ken1

2019/09/22 at 19:58

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #613

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「もしもしっ」と、きみが珍しく低い声で話しかけてくる。
 ぼくはちょっと手首に目をやり、そしてきみの目を見る。
「もしもし」
 今度は低い上にゆっくりと、そしてぼくの手首に視線を移す。
「わたしと一緒なのにどうしてそれが必要なの?」
 きみ曰く、
 急に雨が降ろうと、電車が止まろうと、一緒にいるのにそんな情報要らない。
 ましてやどこかの誰かさんからのメッセージで、
 ふたりの会話を邪魔されたくない。
「ふつうの腕時計でいいじゃん」
 さっきからいろんなメッセージを知らせてくれる
 このスマートウォッチがぼくらの時間を邪魔している。
 確かにね。
 きみと一緒にいるときは必要ないね。
 ぼくはきみに手首を差し出し、外してもらう。
 きみはにっこりと、
「でね、昨日ね」
 また新しい話を始めた。

Written by ken1

2019/09/15 at 22:29

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #612

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ーもしもし。
 と、きみが少し小さな声で聞いてくる。
 きみには珍しく、世の中の愛の違いを聞いてくる。
 ぼくにもよく分からないな。
 するとまたきみは聞いてくる。
ーもしもし。
 じゃあ、男女の愛と両親の愛、このふたつの愛の違いはなぁにと聞いてくる。
 ぼくはちょっと天井を見あげる。
 そうだなぁ、男女の愛と違って、両親の愛は無償の愛なんだろうね。
 だから、愛の色が違う気がするよ。色っていうより手触りかなぁ。
 ぼくはきみをますます迷宮に迷い込ませたみたいだ。

Written by ken1

2019/09/07 at 20:34

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #611

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 きみが両手を使ってスマホに文字を打つ。
 片手だとこの画面のサイズでは指が届かないらしい。
 でも、とても器用に、とてもスピーディに文字を打つ。
 きみは笑いながら、ぼくと指を重ねる。
 大して指の長さは変わらないのにね。
 ぼくも笑いながら、重ねたきみの指を見る。
「もしもし、どお?」
 そして、きみは自慢げにぼくに指を見せる。
 きれいな爪の形をしているなぁ。
 ぼくはそっちに気を奪われる。

Written by ken1

2019/09/01 at 19:49

カテゴリー: kiss

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