風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #479

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 久しぶりの失態だった。
 滅多にそんなことはなかったし、
 あってもきみに迷惑をかけるようなことはなかった。
 自分ではそう記憶している。
「あなたはそう思ってるかも知れないけどね」
 きみは意味深に笑っている。
 ほんとは怒ってるのかなぁ。
 いや、呆れてるんだろうなぁ。
 友だちと軽く飲んで、
 きみを部屋に待たせといて、
 電車乗り過ごして、
 戻りの終電なくして、
 タクシーで深夜の帰宅。
 きみは一人で何をしていたんだっけ。
 それすら記憶にない。
「もしもし、だからね」
 きみは意味深に笑っている。

Written by ken1

2017/02/19 at 22:36

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きみのもしもし #478

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「何かかくしてるでしょっ」
 相変わらず、きみの勘は鋭い。
 隠してるわけじゃないんだけど、
 もう少し黙っていようかなと。
「ふたりの間に内緒ごとはないよね」
 内緒ごとはないんだけど、
 だけどもう少しだけ。
 寒い北風が吹く今月から、
 梅が咲き、桜の蕾が目につき始める頃まで、
 もう少しだから、
 だからもう少しだけ知らせるのは後にしようと。
「何かあるでしょっ」
 ほんの少しだけきみをおどろかそうと計画していたのに、
 きみの勘は鋭い。
「もしもし」
 だめだ。
 計画変更。
 観念したぼくの顔を確認して、
 きみは笑っている。
 あなたの負けねって目をして、
 笑っている。

Written by ken1

2017/02/12 at 22:33

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きみのもしもし #477

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 明け方、きみが夢に現れた。
 初めてではないし、いつものことなのかも知れないけれど、
 今回のきみは微妙な表情をしていた。
 目覚めたとき、そんな気がした。
 目覚めたのは04:30、枕元のスマホで時間を確認した。
 それからずっと寝付けず、
 朝日がカーテンを照らしてくれるのを待った。
 それでもきみはきっと寝ているんだろうから、
 しばらく時計の針が進むのを待った。
 ストーブをつけ、珈琲を入れた。
 もうそろそろいいかな。
 電話にするかLINEにするか、
 少し迷っていると、
 スマホがきみからの着信を告げた。
「もしもし、変わったことない?」
 きみの夢にもぼくが現れたようだ。
 二人してそれぞれの窓から朝日が昇るのを見ていたことになる。
「いつもと同じ朝だよ」
 安心したきみの吐息がスマホ越しに聞こえた気がした。

Written by ken1

2017/02/05 at 18:28

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きみのもしもし #476

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「ねぇ、あなたは良い人?悪い人?」
 きみが小首を傾げている。
 さぁどうだろう。
「悪い人ではないと思うけど。」
「んーっ、じゃあ、あなたは魅力的な人?退屈な人?」
 そうだなぁ。
「退屈な人にはなりたくないなとは思っているよ。」
「そうよねぇ。やっぱりあなたは無難な人生を歩んでいるのかなぁ。」
 ぼくなりの人生をただ歩んでいるだけだと思うけど。
 混んできた店内、カウンターで横に座るきみは残りのカクテルを
 一気に飲み干して、
「でも、それがあなたなんだものね。」
 そう言うと腕を組んできた。
「もしもし、わたしのことはどう思う?」
 ほんのり赤くなったきみの頬が愛らしかった。

Written by ken1

2017/01/29 at 18:45

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きみのもしもし #475

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「あのときどうしてわたしに電話して来たの?」
 懐かしい話を改めて確認しようとしているのかな。
 きみの「もしもし」が聞きたくなってね、
 とは何だか言いづらい。
 だってきみの「もしもし」に対する思い入れは、
 きみには伝えていないから。
 きみは気づいているだろうけど、
 ぼくはこれからも伝えることはないだろう。
「ぼくは誰かに電話せずにはいられなくて、
 だからきみを選んだんだ。」
 しばしの沈黙。
「もしもし、それってStarmanだよね」
 おや?簡単に分かってしまうものなんだね。
ーまったくあなたって。
 と言うきみの表情が電話越しに見えるようだ。
 

Written by ken1

2017/01/22 at 19:03

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きみのもしもし #474

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「あっ仕事してるっ」
 カフェでぼくのMacBookを覗き込んだきみ。
 仕事は会社でするものよとばかりの目つき。
 きみの到着が予想より早かったとも言いづらい。
「その表現だめっ」
 そしていきなり作成中の企画書にツッコミを入れてくる。
「計画1じゃなくて、Plan Aにしなよ」
 横文字ねぇ。
「だって数字は10までしかないけど、アルファベットは26文字」
 言わんとすることがよく分からない。
「もしもしぃ。Plan AがダメでもPlan Bを起動して、Plan Cも有効にできるの」
 きみは得意げにぼくのMacBookを取り上げた。
 どこの誰の受け売りなんだろう。
 そんなにたくさんのプランを考えることはないだろうに。
ー失敗を恐れず前へ進め、アルファベットはまだ25文字もあるんだから。
 それが本当の意味だった気がするなぁ。
 とにかくMacBookは今きみの手の中にある。

Written by ken1

2017/01/15 at 18:59

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きみのもしもし #473

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 きみは何でもないことでぼくを笑わせてくれる。
 久しぶりにきみと居酒屋に入り、たくさんの日本酒を酌み交わす。
 満面の笑顔が目の前にあり、屈託無くきみは笑う。
 普段の会話の延長、でもきみは笑う。
 くいっくいっと徳利を開け、次の銘柄に悩んでは笑う。
 旬のおつまみを頼むけど、まだ旬には早いと、そこでも笑う。
 少し赤みを帯びた頬で、身振り手振りも少し大きくなり、そしてまた笑う。
 そんなきみをフィルムに収めようとカメラを取り出すと、
 きみはまた笑う。
「もしもしぃ、わたしが撮るぅ」
 フルマニュアルのぼくのカメラ、きみは悪戦苦闘、でも笑っている。
 そう、そんなきみの全てにぼくもつられて笑う。
 笑うっていいなぁ。
 素直にそう伝えると、きみはまた笑う。

Written by ken1

2017/01/08 at 19:02

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