風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #562

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きみがひとりでお留守番をしている。

「どこに行くのかな」

寝ぼけ眼のきみが、出かける前のぼくに問いかける。

ちょっとMINIを飛ばしてくるよ。

「昨夜もその前も、ちゃんと寝てないでしょ」

きみのあくびにつられて、ぼくまで大きく口を開ける。

ねぇ女の子は大きな口を開けてあくびしちゃだめなんだよ。

「あなたの口癖ね」

と、きみは笑う。そして続ける。

「運転気をつけてね」

泊まりになるよ。

「こんな気がした」

大丈夫かな。

「もしもし、ばかにしないでね」

そんなきみから留守番の様子の写真が届いた。

きみはまだベッドのなか。

今日も寝ぼけ眼のきみがいた。

Written by ken1

2018/09/24 at 16:17

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きみのもしもし #561

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 きみと90分、話をした。
 そのお店でカウンター越しに向き合って。
 カフェで1時間や2時間、一緒に過ごすことは、よくあること。
 でも今日はずっと話をしていた。
 きみがずっと話していて、ぼくがずっと聞く。
 もしくはその逆。
 そうではなく、小さい子供のピンポンのように、
 大きな弧を描いて、ゆっくりと言葉を交換した。
 まだまだきみはぼくの知らないことだらけ。
「もしもし」
 きみはうれしそうに笑う。
「ずーと続きそうね、わたしたち」
 それについては否定も肯定もしないけど、
 ただ、これから先も、
 もっともっときみのことを知り続けたいと思った。

Written by ken1

2018/09/17 at 00:58

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きみのもしもし #560

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ー近くにいるのよ。
 うん、確かに近くだね。
ーでも今夜は私の時間。
 もちろん、ぼくもぼくの時間。
ーでも待ち人がまだ来ないの。少し遅れる見たい。
 同じだね。ぼくも今夜のお相手が少し遅れるそう。
ー飲んでるの?
 うん、飲みながらその人を待ってる。
ーもしもし。その人が来るまでお相手頼んでよいかしら。
 もちろん。きみの待ち人が早いか、ぼくのお相手が早いか。
ー赤ワインにしようかな。
 ぼくは今ビール。
ーじゃあ、ビールにする。
 少しだけ間があったかと思うと、
 きみから「かんぱーい」と写真付きのメッセージが届いた。
 こんな飲み方もあるんだな。
 ぼくは2杯目のビールを注文した。

Written by ken1

2018/09/09 at 17:54

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きみのもしもし #559

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 きみが寝息を立てている。
 ゆうべ、ぼくが寝るときにはきみはソファで何かを作っていた。
ーまだ寝ないの?
ー友だちに贈るプレゼントを作っているの。
 きみが隣に潜り込んできた時間をぼくは知らない。
 ぼくはベッドを抜け出し、朝食の用意をする。
 珈琲豆を挽く音はきみの眠りを妨げることになるだろう。
 珈琲は最後に、それもドリップパックを使うことにしよう。
 朝の音楽も今日はイアホンで聴くとしよう。
 食器の当たる音にも注意を払い、
 ぼくはサラダとヨーグルトを盛り付ける。
 そうだな、パンは少し厚めに切っておこう、何となくそんな気分。
 ゆで卵なんてのもあると、きみは驚くかな。
 きみの目覚めたときの「もしもし」を楽しみに、
 ぼくは音の出ないメニューでふたり分の朝食を用意する。
 

Written by ken1

2018/09/02 at 18:16

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きみのもしもし #558

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 今日はとても暑かった。
 ぼくらは朝からエアコンをつけ、ずっと写真を見ていた。
ー今日の外出はなしにしよう。
 すべての予定を来週に回し、まずはアルバム帳を開いた。
 一番古いアルバム帳のページをめくり、
 二番目に古いアルバム帳はどれかと探す時間も楽しかった。
 お昼ご飯を食べるのも忘れ、ぐぅとお腹の音で笑ってしまった。
 もう少しでクラウド上の写真に手が届く。
 そのとき、きみが首を横に振る。
「タイムマシーンはここまでにしましょ」
ーそうだね。
 ぼくらは床いっぱいに広がっているアルバム帳に目を向けた。
 写真は時間を飛び越えることができるタイムマシーン。
 最近どこかで目にしたコピー。
 きみはそれを憶えていたのかな。
「もしもし、またタイムトラベルしましょうね」
ーうん。
 そして、ふと、ぼくは思う。
 ところで写真で未来には行けないものか。
 

Written by ken1

2018/08/26 at 19:27

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きみのもしもし #557

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 朝目が覚めて、快晴だったら旅に出る。
 そんな休日の過ごし方をしてみたいと思った。
「いつでもできるじゃん」
 そうじゃないんだ。
 ふらりと国際空港に行って、西の方に飛ぶ。
 そんな旅。
「できなくはないでしょうけど」
 そう、できなくはないんだろうけど。
 しがらみがあったり、先立つものがなかったり。
「ひとりで行くの?」
 ぼくらは今までそれぞれ、ひとり旅でやってきた。
 戻ってきてから、その旅での出来事を伝え合う。
 ふたりになるとますますふらりと行けないだろう。
「もしもし、現実的な話をしましょ」
 きみがぼくに差し出すスマホには、
 年末年始パリ行き航空券のリストが表示されていた。

Written by ken1

2018/08/19 at 19:14

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きみのもしもし #556

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「想い出はいくつあっても足りないね」ときみが言う。
 人は忘れていく生き物だとよく耳にする。
 想い出を100個作っても、いったいいくつ憶えているのだろう。
 忘れたくないのに忘れてしまう想い出もある。
「だったらひとつでも多くの想い出を作ろっ」
 きみはそう言って、
 今日と明日のふたりの共同作業をぼくに伝える。
「もしもし」
「何かな」
「わたしはぜーんぶ憶えているのよ。何ひとつ忘れない」
「そうだね。ぼくもそうだよ」
 忘れないために、せめてもの抵抗。
 ぼくらはそっと手を繋ぐ。

Written by ken1

2018/08/12 at 16:31

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