風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #569

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 金曜夜、仕事帰りに本を選ぶ。
 その週またはそれ以前にお気に入りに入れていた。
 その中から一冊を注文する。
 土曜午後早い時間に本は届く。
 今更ながらに便利な世の中。
 土曜の午後、スマホに配達完了の知らせが届く。
 それをスマートウォッチで受けて、
 郵便受けまで本を取りに行く。
 するとそこにきみがいた。
「もしもし、読書の秋、ですか?」
 ぼくは素直に頷く。
「公園でサンドウィッチなんて、いかが?」
 ランチを済ませていても、ぼくは笑顔で頷く。
「わたしも持ってきたのよ」
 きみはサンドウィッチの入った袋をぼくに手渡しながら、
 kindleを見せる。
 小春日和の今日。
 ぼくらはのんびりと読書の秋に浸る。

Written by ken1

2018/11/11 at 18:22

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きみのもしもし #568

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 きみに早く会いたいね。
 そう思いながら、朝から今日の家事を済ませる。
 朝からやっているのだが、遅々として家事は進まない。
 新聞の集金、予定外の宅配便。外的要因もあるけど、
 やはりぼくは家事がどうも苦手なようだ。
 お掃除ロボットもクルクル回りながら手伝ってくれている。
 でも、全体としてはなかなか進まない。
 きみに会いたいと思えば思うほど、進まなくなるから不思議だ。
 そこで、家事の順番を入れ替えてみてはどうだろうと手を止めた。
 すると、あれ?
 今日のぼくはこんなきみに会いたいのに、何をやっているんだろう。
 そんな気がした。
 ところで、今日のきみはぼくが思うほど、ぼくに会いたいかな。
 そんなことまで考えてしまう。
ーもしもしぃ、早く会おうよぉ。
 そんなきみを想像して、
 ぼくはまた家事に取りかかる。

Written by ken1

2018/11/04 at 18:43

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きみのもしもし #567

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 宿題がまったく理解できない。
 いや、違うな。教わったことが消化できないでいる。
 テキストを見ても、そう書かれているけど、理屈が腑に落ちない。
 ネットで検索してもスカッとするものにヒットしない。
 クラスメイトは親切にSNSで教えてくれる。
 言わんとすることは、その気持ちは伝わってくるのだが、
 でもぼくは理解できない。困ったなぁ。
「何にらめっこしてるの?」
 うんうん唸っているぼくを見て、きみがしびれを切らす。
「もしもし、ドラマ始まったよ」
 ドラマはビデオでもいいか。
「もしもしっ、お茶冷めちゃうよっ」
 あっそれはやばい。
 せっかく温かいお茶を入れてくれたきみ。
 うん、いいや、宿題また後で。
 温かいお茶の方がとても重要だ。

Written by ken1

2018/10/28 at 21:32

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きみのもしもし #566

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 きみが風邪をひいた。
 熱はどうにか下がったようだか、声はほぼ出ないらしい。
 こんなときSNSって便利だなと、少し不謹慎ながら思う。
 何か作りに行こうか?
ーあなた、料理下手。
 短文でやり取りできる利点もある。
 だけど、これは来るなと言っているのか、不明。
ーチャプチェ作る。牛肉と豚肉の切り落とし。
 あぁ、材料買ってこいという事か。
 ぼくの分はどうしよう。
 材料を届けるだけにしようか、少し悩む。
ーもしもし。チャプチェ食べてってね。
 病人に作ってもらうのは気がひけるなぁ。
 それもそうだが、さてはて肉はいったい何グラム必要なんだろう。
 普段料理をしないぼくは、てんで見当がつかない。

Written by ken1

2018/10/21 at 19:17

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きみのもしもし #565

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 毎年夏の花火を楽しみにしていたけど、
 今年から?今年だけ?今月になったこの花火大会。
 日没が早まった分、始まりも1時間早くなる。
「もしもし」
 時間を確認せずに遅刻したことに何か言われるかなと思ったが、
 きみは違うことで頭がいっぱいらしい。
「寒いよね」
 もう秋だからね。
「こんなに寒いのに、ほら」
 きみの視線の先には浴衣姿のお嬢さま方がいた。
「一人や二人じゃないのよ」
 冷たい空気にきみは少し身震いをする。
 みんな若いね。
「大人なわたしは首をひねってしまいます」
 そっか大人だものね。
 そんなきみはストールを巻きなおし、
 始まった打ち上げ花火に視線を移す。

Written by ken1

2018/10/14 at 15:56

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きみのもしもし #564

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ー当たっちゃった。
 きみから送られてきた写真には、
 ゼッケンの横に赤く大きく当たりのスタンプが押されていた。
ー完走したらもらえるそう。
 じゃあ、是が非でも頑張らないとね。
ーでも何がもらえるのかしら。
 4時間半後のお楽しみ、だね。
 きみはこれから久しぶりのフルマラソン。
 そろそろスタートの合図が響く。
ーもしもし、完走したらあなたからも何かあるのかしら。
 そうだね、いいよ。
 また今回も応援には行けない。
 でも、きみはきっと完走することだろう。
 秋晴れの今日、体を動かすにはちょうど良い気候。
 朗報、お待ちしています。
 でも、何が当たるんだろうねぇ。
 ぼくまで気になってしようがない。

Written by ken1

2018/10/08 at 01:32

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きみのもしもし #563

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 きみからランチのお誘いがあった。
 待ち合わせはそのお店。
 ぼくがお店に着くと、きみはニコニコと待っていた。
 テーブルには真新しいメニューが広げてあり、
 きみはその中のひとつを指さした。
「覚えてる?」
 そんな問いかけはずるいなぁと思いつつ、
 でも何もピンと来ない。
「もしもし、教えてあげる」
 きみは自慢げでもなく、ほんの少しだけ頬を染めて続けた。
「初めて一緒にランチをした場所はここ」
 え?
「そして、そのとき食べたのはこれ」
 え?
 当時のお店はすでになく、その場所には今はこのお店があり、
 ただ、当時から評判のよかったこのメニューだけは受け継がれているらしい。
 よくたどり着けたね。
 ぼくは素直に感心する。
 きみは素直に胸を張る。

Written by ken1

2018/09/30 at 23:41

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