風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #548

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 ミツバチさんやアゲハ蝶さんが見ている花の色と
 わたしたちが見ている花の色は違うのよ。
 週末のテレビ番組でそう言っていたと、きみが言う。
 それなりに科学的な理由で解説してたけど、
 わたしは違うと思うのね。
 わたしたちだって人を色眼鏡で見たり、先入観で決めつけたり、
 第一印象がずっと引きずったりするじゃない。
 きっと虫さんたちはずっとずっと以前に、とってもとっても昔に、
 花さんたちと何かあったのよ。
 だから今でも花さんたちをわたしたちとは違う色眼鏡で見てる。
ーねぇそう思わない?
 そう言ってきみは科学を覆す。
ーそうかもね。
 ぼくは少しだけ困ってしまう。
ーもしもし?わたしの言ってること変?
 そうじゃあないんだけど。
 きみの誕生日にサプライズで部屋を飾った色とりどりの花。
 さてこの後、きみはどんなリアクションをするんだろう。
 そっちの方がぼくは気になっている。

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Written by ken1

2018/06/17 at 19:20

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きみのもしもし #547

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 ベストセラーになったあの小説のどこかに、
 空の写真を病室の天井に張りめぐらせるシーンがあった気がする。
 すごく著名な写真家のあの人は奥様が他界した後、
 空ばかりを写していたと書いていた。
 空ってなんだろう。
ー見ていて飽きないね。
 今日は朝からあいにくの雨。
 少し肌寒い。
 ぼくの淹れた珈琲を両手で包んで、
 きみはリビングの窓からどんよりとした空を見上げている。
 ぼくはそんなきみの横顔を楽しむ。
ーもしもし。パンケーキ焼いたげよっか。
 きみがキッチンに入って、
 今度はぼくが空を見上げる。
 確かにこんな雨模様の空でも見飽きない。
 空ってなんだろう。
ー神様がくれた一番のプレゼントかもね。
 キッチンからきみの声が聞こえた。

Written by ken1

2018/06/10 at 18:03

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きみのもしもし #546

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 きみの姿が見えない。
 夢なんだろうな。
 そんなことを考えながら、
 ぼくは左の部屋のドアを開ける。
 そこにももちろんきみの姿は見えない。
 どうして、もちろんなんて思ったんだろう。
 今度は右の部屋。
 きっときみはここにもいない。
 そう分かっているのにドアノブを回す。
ーもしもし、ここにいるのに。
 きみはずっとそこにいたかのように現れる。
 気づかないうちにぼくのそばにいる。
 そして笑ってきみはぼくに言う。
ーもう少し寝なさい。
 うん。
 素直にぼくは夢の中で、もう少しだけ眠りにつく。

Written by ken1

2018/06/04 at 00:04

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きみのもしもし #545

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ーどうだった?
 うん、よかったよ。
ー心と体、浄化されたんじゃない?
 なんだかな、それ。
ーだっていつもそうだもの。
 だからたまに帰るんだろうな。
ーいいね、帰れるところがあって。
 いつまであるかな。
ーいつまでも、ずっと。
 そうだね。
ーそのお返しは何かしてきたの?
 肩もみ。
ーいいね。
 親父にもたまにやってもらってたって、お袋よろこんでたよ。
ーそりゃそうよ。
 あと、神社の裏で一緒にホタルを見た。
ーえっ。
 たっくさんのホタルがふわっと飛んでるんだ。
 きみが少し間を置いて言った。
ーもしもし。次はわたしも一緒に見たい。
 そうだね、来年はそうしよう。

Written by ken1

2018/05/27 at 19:18

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きみのもしもし #544

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ーどうしてそんなに何かをやろうとするのかな。
 きみがぼくの予定帳をゆっくりめくりながら、不思議そうな顔をする。
 きっと貧乏性なんだよ。
ー何かをやってないと落ち着かないの?
 そうじゃない。
 またきみは不思議そうな顔をする。
 次にやることを思いついちゃうんだよね。
 ずっと先のことも、この直後のことも。
 きみは口を一文字にとじ、首を横に振る。
ーもしもし、たまには全てをオフにしてね。
 ぜーんぶオフにするんだよ、ときみはもう一度首を横に振る。

Written by ken1

2018/05/20 at 19:15

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きみのもしもし #543

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 ふつうが一番大切で、むずかしくて、
 一日の生活もふつうに過ごせたら、
 それはとても幸せなこと。
 昨日と同じように今日を、
 今日と同じように明日を、
 毎日をそんな風に過ごせたら、
 昨日気づかなかったことに今日気付けたり、
 そうすると今日はより素晴らしい一日になって、
 明日はもっと素晴らしい一日になる。
 毎日を同じように過ごすだけで、
 毎日が素晴らしい日の連続になる。
「もしもし。いいんだけどさぁ」
 そうだね。失礼失礼。
 きみと観ているこの映画、いい台詞がたくさん散りばめられてるだよね。
「だからっていちいちメモ取らないっ」
 はい。
「あとで感想話そうね」
 きみは笑って手元にリモコンを引き寄せた。

Written by ken1

2018/05/13 at 18:48

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きみのもしもし #542

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 きみが精一杯口を一文字にする。
 きみは口を一文字にすると笑窪ができる。
 ただし右側だけの片笑窪。
 かわゆいんだけど、
 これはきみにとってはよろしくない状態の証。
ー失くしたの。
 とっても大切にしていたものをどこかに落としたらしい。
 一生懸命笑顔を保とうとして、 
 きみの片笑窪はますます深くなる。
ー言われなくてもわかってる。
 そうだね、形あるものはいつかは壊れ、いつかは無くなる。
ー大切な思い出と思いはずっと残るんだもん。
 瞬間、きみの笑窪が消えた。
ーもしもし。でもね。でもね。
 大丈夫。明日には見つかるよ。
 もっともっと思いが深くなるように、
 きっときっと明日には見つかるよ。
ー無責任っ。
 きみは呆れず怒らず、笑ってくれた。

Written by ken1

2018/05/06 at 21:44

Posted in kiss

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