きみのもしもし #806
道を歩くと、鳥のさえずりが聴こえる。 耳を澄ますと、車の音が聞こえる。 湧き水も美味しい。 ここの湧き水はマンデリンとの相性がとても良いと、焙煎所のご主人が言っていた。 そんな田舎がぼくの故郷だ。 ーもしもし、鳥のさえずりが聴こえるの? うん、聴くともなしに聴こえるよ。 ーもしもし、車の音が遠くに聞こえるの? うん、車の音が遠くに遠くに聞こえるんだよ。 ーもしもし、美味しい珈琲が飲めるの? うん、お茶も美味しいよ。 きみはとってもとってもとっても興味津々だ。
きみのもしもし #805
ー毎日をルーティーンにしようっ。 きみが突然に右手を突き上げる。 でもさぁ、気ままにすごすのも良いと思うよ。 きみは力強く首をふる。 ールーティーンにすると毎日が楽しくなるよ。 ー同じ時間に散歩に行って、花が咲いてるのに気づいて季節の変化が分かったり。 ぼくは少し考えた。 じゃあ、朝1時間ぼーっとすることにしよう。 きみも少し考えた。 ーもしもし。それ、毎日同じ時間に始めるのよ。 きみはくくくと笑ってる。
きみのもしもし #804
これから夜が始めるね。
太陽が山の向こうに沈もうとしている。
ー今は昼と夜の間の時間だね。
ーこの時間、わたし大好きっ。
その言葉になぜかドキッとするぼく。
ーもしもし、顔赤いよ。
きみはうふふと笑ってる。
きみのもしもし #803
「ありふれた日常の何気ない一瞬、なんだ」 と、ぼくはきみに伝えた。 ーそれがわたしや誰かのセレンディピティに繋がるといいね。 Serendipity、セレンディップの三人の王子たち、だね。 偶然の産物、どこかの誰かの何かにね、 そんな写真が撮れるといいな。 ーもしもし。気軽にね。 この街並みもこの空も、そしてきみといることも、何気ない一瞬がきっと何かに繋がるのだろう。 そしてぼくはきみの姿をカメラに収めた。
きみのもしもし #802
もっと寝てようか。 ーうん、寝てよう。 そろそろ起きる? ーう〜ん、もう少しだけ。 そうだね。 ーもしもし、起きる? もっと寝てよう。 ーそうだね。 いいなぁ、寝るのって。 きみは隣で目を細めてる。