風、空、きみ

talk to myself

promise #52

leave a comment »

.flickr-photo { border: solid 2px #000000; }
.flickr-yourcomment { }
.flickr-frame { text-align: left; padding: 3px; }
.flickr-caption { font-size: 0.8em; margin-top: 0px; }


F train platform, originally uploaded by adropp.

 おれはあーくんの信号が消えたことを、表現を変えて両親に伝えた。
「学校のこともあるんだけど」
「ずっと友だちだったんじゃないか、祐二の気が済むようにしなさい」
「そうよ。祐二くんにとって何が大切かが重要なのよ。でも1日一回は電話を頂戴ね」
 そんな両親は優しくおれを送りだしてくれた。
ーふたりして元気で戻ってこい。
ー早くいってらっしゃい。
 ふたりの心の声がおれの胸に響いてきた。おれだけじゃなく、おれの友だちのことまで本当に心配してくれているのが、その響き方で強く感じられた。
「ありがとう。ちょっと行ってくるね。おれが行くんだもの、あーくんは大丈夫さ」
「そうだな。お父さんもそう思うよ。さっ、行ってこい」

 新幹線に乗って、在来線に乗り換えて、おねえさんから診療所に近いと教えてもらった駅に降り立つと、無人改札の先に一組の男女の姿があった。
「ゆうじくん?」
「小早川祐二くんかな」
 無人駅の改札前の街灯で浮かび上がったふたりの顔は、数年前の新幹線のホーム、麗奈を見送った時に見た覚えのある顔だった。
「わかるかな」
 確かにあのときよりも思っていた以上に歳を取っているように見て取れた。それはそうだろう、一人娘の治療とはいえ、会社を移りこの地での新しい生活を始めたのだから。でも、それ以上に抱えているものが、目の下、口元に現れている気がした。
「はい、小早川です」
「由香ちゃんから連絡があってね」

 電車を降りてからのうだるような蒸し暑さで噴きだした汗は、麗奈のおとうさんが運転する車のクーラーで一気に収まった。それは不思議な冷たさ、感覚だった。
「あーくんが麗奈に、いえ、明くんが麗奈さんに会いに行ったと聞いているんですが」
ーえっ。
 おかあさんの動揺が響いてきた。
 おとうさんはおかあさんに目配せをする。
ーわたしが話すから。
「明くんは今、市内の病院で休んでいるよ」
「元気なんですか」
「疲れているんだろうけど、ただ」
ーただ。
「意識がないんですね」
 おとうさんが運転席から後部座席のおれに顔を向けた。
「どうして」
「何となく、虫の知らせ、かな」
「眠っているよ。見つかった時からすでに眠っているんだよ」

 病院までの時間で、わかったこと、わからないことがある程度はっきりしてきた。
 麗奈のおとうさんはおれにあーくんの状況を説明することで自分の中でも今日起こったことを整理しているようだった。解決のしない整理、状況がより現実離れしている、それを再認識するだけだったのかも知れない。おかあさんはおとうさんがおれに説明する内容で、次第に嗚咽を漏らし始めた。
「着いたよ、小早川くん。もう遅いがどうする」
「一目だけでも」
 おとうさんは車を病院の裏口へ回してくれた。

(続く)

Written by ken1

2007/08/05 @ 14:04

カテゴリー: promise

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。