風、空、きみ

talk to myself

promise #57

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Snow White, originally uploaded by elizz.

 麗奈が自信あり気な、でも少しだけ淋しそうな表情を携えて消えて行ったあーくんの病室に目を向けると、そこには葉子が立っていた。
「考え事は済みましたか」
 ノースリーブの腕がやけに白く見えた。葉子が腕を組んで、病室の入口に背をもたれている。笑顔がやけに新鮮で、おれの気持ちがほぐれて行くのが分かる。
ーハコ、キスしてくれないか。
「やっぱり来たんだ」
「メール、読んでないでしょ」
「あーくんと話ができたら、読もうと思ってたんだ」
「それじゃ遅いよ。行こうっ」
 葉子はおれに手招きをすると進んであーくんのベッドサイドへ腰かけた。

 おれがさっきまでやっていたように、葉子はあーくんの手を握りしめ、でもあーくんに話しかけるのではなく、おれに顔を向けた。
「祐二がこっちを出てから、少ししてからかな。明くんがわたしに話しかけてきたの」
ーどうして直接、おれじゃないんだ。
 おれは少し苛立たしい、そして淋しい気持ちに包まれた。
「明くんは分かってるよ。祐二もそろそろ気づいてるかな」
「おれだけ、そう、なぜかおれだけあーくんと話せていないって事かな」
「うん」
ー麗奈も同じようなことを言っていたよ。
「ひとはいろんな思い出、忘れちゃうでしょ。そして楽しかったことだけ、そのうちそれも一番楽しかったことだけになって、もっともっと時間が経つと存在だけの記憶になって、さみしいけど、ひとってきっとそうなんだよね」
「だから、ハコはね、わたしなんかいろんな手段で忘れないように繋ぎ止めるんだと思うの」
「でも、祐二も明くんもずっとずっととっても友だちだから、そんな術を知らないんじゃないかな」
 葉子が間を置きながら、おれに話している。言っていることは麗奈の言葉とつながっている気がする。
 
 病室の窓のカーテンが揺れた。麗奈が揺らしている?でも室内の温度は下がらない。単なるそよ風が葉子とおれに触れて行く。
「キスしよ」
 葉子があーくんの手を離し、立ち上がり、おれの肩に両手をかけてきた。
 とても優しい暖かなキスだった。
「どんなことでもするわ。祐二の記憶にとどまるためには」
 おれに触れる葉子の胸が柔らかかった。

「話さなくてもわかっているはずだよって。明くんがそう言ってきたよ」
ーそのとおりだよ。あーくんが正しい。だっておれとあーくんだもの。でもね、確かめたいじゃないか。このままもう一緒にバカやれないんだぜ。勝手に自分だけ麗奈を独り占めなんてないだろう。
「うん、もうわかってるよ、ほんとはね」
 足元の温度が下がった気がした。近くで麗奈も聞いている。
「でも、言いたいこと、聞きたいこと、あるんだよ」
「十分わかっているのに、そうしたいのね」
 葉子の声がハモって聞こえた。葉子と麗奈が重なって、おれを見つめているんだ。
「言葉を交わさないと分らない、普通の友だちになっちゃうよ」
「思い出が少しずつ消えて行く、普通の友だちになっちゃうよ」
 おれは悔しい気持ちになって行くのを感じた。

(続く)

Written by ken1

2007/09/09 @ 11:08

カテゴリー: promise

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