風、空、きみ

talk to myself

promise #58

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innocence, originally uploaded by fernandadesu.

 葉子は「しょうがない人ね」とおれの首筋にキスを残し、病室を後にした。
「中庭にいるから、いつでも呼んでね」
 おれの足元に絡んでいた冷気も、葉子と一緒に病室から消えた。麗奈も中庭に行ったんだろう。
 しばらくすると病室の窓から、中庭のブランコに腰かける葉子が見えた。葉子は手を振っている。そして、葉子の笑顔はおれの心を穏やかにしてくれる。ブランコは後方の大きな木に守れて、葉子を陽射しが包むのも遮ってくれている。

 中庭に臨む窓から離れ、おれはもう一度あーくんのベッドサイドに腰かけ、あーくんの手を握りしめた。
「あーくんの言葉が直接おれの心に響いてくると、それはもう今までの友だち関係じゃなくなったってことなんだね」
 あーくんの表情は何一つ変わらない。
「あーくんとはすっごい友だちなんだから、もう全部わかってるだろうってことなんだよね」
「、、、わかってるよ。麗奈にずっと淋しい思いをさせてた責任を感じてるんだろう。あの日、新幹線のホームでおれたち約束したもんな、会いに行くってさ」
「でも、結局会いに行けなかった。麗奈の方から会いに来ちゃったね。そして麗奈はもうここにはいなかった。麗奈はこっちにもあっちの世界にもいけなくって、彷徨っているんだよね」
「だからってあーくんがあっちの世界に行くことはないだろう。おれと一緒に麗奈をもう一度見送ってあげれば済むことじゃないのか」
「どーなんだよ、あーくん。そんな説明もなくって、そんなことも一言も相談なくって、、、勝手にひとりだけ眠ってんじゃねぇよ」
 おれの指もあーくんの指も白くなるほど、いつの間にかに、おれはあーくんの手を強く強く握りしめていた。

 強く握りしめすぎていることに気づいて、少し力をゆるめた、その時だった。いきなりラジオのノイズがフルボリュームで聞こえてきた、そんな不意打ちがおれを襲った。
ーガガガガ
ーしょうがないじゃん。
ーガガ
ーずっと好きだったし。今も好きなんだから。
 あーくんがおれの手を握り返してきている。でも、表情は変わらない、眠ったようなまま。
ーゆうちゃんは、いつもだったら、人が思っていることを自分の意思ではないにしろ、たまに心でキャッチできてたんだろ。
ー。。。
ーそこに話しかけるのって、むずかしいんだね。麗奈が言ってた通り、今までおれたちだと普通だった「話さなくても分る」ってのが、今回はけっこう厚い壁になってるね。
ーその壁どうした。
ーとっぱらった。
ーそれって。
ーうん、普通の友だち、そして単なる知り合い、だよな。
ー。。。
ーもう会えないからちゃんと言わないと、それにゆうちゃんも直接おれの口から聞きたかったんだろ。
 その言葉をあーくんから聞けただけで、もうこれ以上は何も聞かなくても分るとおれは思ってしまった。あーくんもそう感じているようだった。
ー分ってくれるよな。
ー分ってたよ。でも少しだけ自信がなくて、もう一緒に遊べなくなると思うと、どうしても最後に話がしたかったんだ。それが単なる知り合いになることにつながろうとも。
ー忘れられちゃうのかな、おれ。
ーそんなわけないじゃないか。あーくんとおれだぜ。
ー忘れられないためにおれができることはもうきっとないんだろうけど、おれが忘れられないためにゆうちゃんにお願いがあるんだ。

 おれは「何でも言えよ。何でもきいてやるから」と、何度もあーくんの表情のない寝顔に向って繰り返した。

(続く)

Written by ken1

2007/09/16 @ 11:31

カテゴリー: promise

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