風、空、きみ

talk to myself

promise #59

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, originally uploaded by Lili Les Roses.

 その日の夜に、あーくんは眠ったまま、二度と目を覚ますことなく、自らのすべての機能を停止させた。その連絡をおれは葉子が泊まっているホテルで聞いた。
「明くんが亡くなったそうだ」
 連絡は麗奈のお父さんから受けた。お父さんの言葉数は少なく、感情が押し殺されているようで、無機質に響いてきた。しかし、1時間前におれはあーくんと最後の言葉を、この部屋で交わしていた。

ーほんとにこれでさよならだ。
 部屋の灯がかすかにまばたき、足元に冷気を感じた。葉子は金縛りにあっているかのごとく、身動き一つ、まばたきひとつしなかった。
ーそうか。さみしくなるな。
 おれは淡々としていた。それはあーくんも同じだった。既知の事実、動かしがたい、病室での会話で覚悟はできていた、だからだろう。
ーお互いな。
ー麗奈もそこにいるんだろう。
 冷気がひざ上まで絡んできた。
ー麗奈、もうさみしくないか。
ー、、、うん。
ーよかったね。
ーごめんね。
ーううん、麗奈の笑顔が、おれたちは大好きだったんだ。その笑顔が見たくてあーくんは今、麗奈のそばにいる。そして麗奈の笑顔をおれも感じることができる。これでよかったんだろうし、なるようになったんだよ。
ーそうかな。
ーそうだよ。
ーやっぱり祐二くんは優しいね。
 何が本当に優しい行為なのか、おれには判断もつかなかった。ただ、麗奈にそう言ってもらえるだけで、おれはおれなりに肩の荷が下りた気がした。ずっとずっと会いに行こうと決めていて、結局会いに行けなかった麗奈に対し、おれとあーくんが心に決めていた約束、それを果たせた気がした。あーくんの取った行動とはまた違うけれども、麗奈の笑顔が見える、それがうれしく、ほっとしている自分を感じていた。
ーゆうちゃん、そろそろ行くね。
ーそうだね。麗奈をよろしくな。
ーハコと仲良くやれよ。
 いろいろあったなと、おれたちは苦笑いをした。
ーそれから、あの事、頼んだぜ。
 右手にあーくんの温もりが伝わってきた。おれはその温もりに対し強く握り返した。その温もりもおれの手を強くつかむと、でも次の瞬間にはあーくんは一方的に力を緩めた。そして二度と握り返してくることはなかった。
ーおお。
 あふれ出る涙を、おれはぬぐうことはしなかった。

「今、行っちゃったんだね」
 葉子がおれの肩に頬を乗せてきた。
「ずるいなぁ、おとこの友情って。さんざんわたしを使っときながら」
 葉子が優しく微笑みながら、泣いている。
 おれは葉子の涙にキスをすると、そのまま抱き寄せ、ぽっかりと空いた穴を互いに埋めるかのように体を重ねた。

 翌朝、珈琲の温かい香りがおれを目覚めさせた。下のコンビニで買ってきたインスタントものだけど、と葉子はそっとベッドサイドに珈琲を置いてくれた。
「病院は?」
「行かないよ。さぁ、帰ろうか」
 おれと葉子は軽く唇を重ねると、ホテルを後にした。

(続く)

Written by ken1

2007/09/23 @ 07:48

カテゴリー: promise

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