きみのもしもし #142
修学旅行の中学生が団体写真を撮っていた。
先生が右の男の子を注意する。男の子はそのときだけはきちんと正面を向く。
今度は注意されたことをみっつ隣の女の子が茶化す。すると先生がまた注意をする。
数回その繰り返し。
その様子を、古都の建立物を背景にカメラに収めてみる。
ファインダー越しにひとりの女の子と目が合った気がした。
シャッターを押した後、女の子を確かめると、やっぱり視線が合ってしまった。
そのとき、きみのもしもしが聞こえてきたような気がした。
ーもしもし、わたしもあんなだった頃あるんだよ。
古都のそよ風が、きみの声を運んできたのかな。
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