Archive for 8月 2010
きみのもしもし #150
ー昨日、何したか、覚えてるっ?
気づくと今、ぼくはMacを前にうとうとと意識が飛んでいた。
何したか?
今日の睡眠不足の原因は、久しぶりのきみとの時間。
覚えてるっ?って言われても、覚えている限りのことには自信はあるんだけど。
ーいいんだけどさ。
よくないときに限って、誰でも使うフレーズ。きっときみも例外じゃないんだろうな。
ー忘れるんだろうな、無理だろうなって思ってたけどさ。
返事を打つ暇も、このタイミングで返事する勇気もない。
ーもしもし、あのね、待ってたんだよ。
あっ。そうだっ。
ぼくはもうこれ以上、きみからのメールを受け取る訳にはいかない。
そうだよね、別れ際に約束したよね、そうだったよね。
怒っているようにも読めるきみからのメール、
そうじゃなかったんだね。
ずっと、きっと、心配してたんだよね。ぼくは心配かけてたんだよね。
「ちゃんと帰り着いたよ。安心していいよ」
ぼくは声を伝えた。
「なら、いい」
きみは小さく頷いた。きっと頷いた。
「もしもし」
もっと小さいきみの声。
「ほんと待ってたんだよ」
「うん、」
ありがとう、ぼくも小さくつぶやいた。
きみのもしもし #149
ー川を挟んで、そっち側とこっち側だね。
きみからのメールが届く。開始まであと5分かな。
ー同じ形に見えるのかな。
きみは陣取っている付近の写真をメールにつけてくる。
なるほど、川に近いところにシートを敷いているんだね。
ーそっちはどの付近なの。
歩道橋の上は写真を撮って送るほどの場所ではないな。
ーそこ、ちゃんと見えるのかな。
そのメールとともに夜空に大きな打ち上げ花火が花を開いた。
そして空気をふるわす音がお腹に響く。
今夜の花火大会、違う場所から同じ花火を見ているんだよね。
ーもしもーしっ。見えてますかぁ。
メールとともに花火をバックにしたきみの笑顔が送られてきた。