風、空、きみ

talk to myself

Midnight Zoo #47

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ーだからね、わたしたちの身体がもう耐えられなくなってきているのよ。
 ソファに横になっている晴香に、リビングのテーブルに座っている晴香が話しかけた。静かなゆっくりとして口調だった。
 横になっていた晴香はなれない動きで身体を起こし、ソファに深く背をもたれかけた。テーブル側の晴香はテーブルに肘を立て両手の指を絡ませている。
ーどうしてこの部屋にふたりが同時に存在しているの?
 ソファから天井を見ていた春香は少し顔を左右に振ると、テーブル側の晴香に視線を投げ掛けた。
ーわたしたちの身体はまだ洗面台のところに横たわっているわ。どっちのわたしたちの意識で動けばいいのか身体が混乱して、オーバーヒートでも起こしたんじゃないかな。
 淡々と話す晴香の言葉を素直に理解できず、もうひとりの晴香は改めて部屋をゆっくりと見回した。
 何も変わったところはない。普段通り。ちがうのはリビングにもうひとりの自分が座っていることだけ。そのもうひとりが長い間、自分たちの、いや自分の身体を、昼間の時間を占有していた晴香であることは理解できていた。
 そして、リビングの晴香もソファの晴香も互いに輪郭がおぼろげだった。
ーふたりして同じ時間帯を占有したいと考えるようになったときから、現実的な肉体は悲鳴を上げ始めていたんでしょうね。
ーどうして今まで昼間の時間を支配していたあなたが気づかなかったのよっ。
ー支配はしていないわ。ふつうにすごしていただけよ。
ーその考えがむかつくっ。いいからなんで気づかなかったのっ。
 聞かれた晴香は首を横に振り、
ー無理よ。夜のあなたが存在することで昼間の疲れがとれないんだろうな、としか思っていなかったから。そこでわたしたちの精神的存在場所が入れ替わって、どっちからの命令が正しいのか身体だけでは判断できなくなったのよね、きっと。
 それを聞いた晴香はほくそ笑んだ。
ーじゃあ、もう大丈夫じゃない。だって、ほんのちょっと前から主体はわたしに切り替わってんだから、わたしの命令のみで身体は動けばいいのよ。
 テーブルからため息が漏れた。
ーわたしでもあなたでも誰からの命令、だれの意識としてでもいいわ、わたしたちの身体が再起動してくれればね。
ー動くに決まってるじゃない。
ーそうかもね。でもいきなりあなたで試す?あなたが主になったとたんに起きたことなのよ。
 テーブルの晴香の口元が少しだけ笑っている。
 確かにそうかも知れない、ともうひとりの晴香は思った。でもやっと手に入れた身体を再起動させるのにまたテーブルの晴香を一旦だけでも昼の存在として身体に認識させるのは避けたかった。そのまま昨日までの昼と夜の関係に戻りそうだったから。

(続く)

Written by ken1

2010/08/01 @ 10:04

カテゴリー: zoo

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