Archive for 10月 2010
きみのもしもし #158
白ワインがもう3分の2ほど空いている。
残りはあと少し。なくなるまでにさほど時間はかからないだろうな。
深夜のワイン、深夜のオークション。
ーだから、やっちゃダメっていっつも言ってるでしょ。
きみの声が聞こえた気がした。
ーもしもし、あのね。
説得してくれるような、すでにあきれているような、そんなきみの声。
こんな夜中だから、きみはもう十分に夢の中かな。
あとで言い訳できるように、オークションのURLをそっときみに送る。
そして、同時に入札完了。
さてとこのクラシックカメラ、落札できたら、まずはじめにきみを撮るからさ。
そんないい訳も用意して、ぼくは残りのワインをグラスに注ぐ。
きみから返事は来ないかな、
早く落札できないかな。
こんな夜中に少しだけわくわくしながら、ぼくはワインを口にする。
きみのもしもし #157
「もしもし、雨の日はね」
きみがシーツを鼻先まで引き上げながら、したり顔っぽい目つきで話しかける。
「地面を撮るといいんだよ」
肌寒い朝で、いつまでもベッドからでないぼくたち。
きみはくるくるっとした黒目だけ出して、ベッドサイドのカメラに視線を移す。
「も少し待つとね、晴れ間が顔を出して、水たまりにいろんなものを映してくれるの」
そしてぼくに乳房を押しつける。
「もしもし、、、今すぐじゃないのよ。も少ししたらね、お散歩に行こうね」
そのも少しのあいだ、ぼくらは身体を暖めあうことにした。