Archive for 11月 2010
きみのもしもし #162
きみの口元がぱくぱく動いている。
路上に人があふれ、大きな声を出すのがはずかしいんだろうね。
一生懸命、ぱくぱくしている。
それはそれで、いい表情じゃん。
ぼくは肩からかけていたカメラを手にとり、ファインダーを覗く。
あっ、その言葉は読み取れるよ。
きみは「もしもーし」とぱくぱくしていた。
人通りの多い散歩道、すかさずポーズを決めるきみの一枚を撮ることができた。
きみのもしもし #161
「もしもーし」
「もしもしぃ」
「もっし、もっし」
きみがいろんな声色でぼくの好きな「もしもし」を連発する。
特定のミュージシャンとか特定のジャンルとかこだわらず、カーステレオのBGMはiPodにダウンロードしている3,000曲のシャッフル再生。1曲1曲からなつかしい想い出を思い出したり、口ずさんだり。そうして遠出のドライブは続いている。
「もしもし」
少し真剣な声できみがぼくに話しかける。
「BGMもいいけどさ、少しお話してよ」
音楽に気を取られていたぼくは、きみのもっともな言い分に反省する。
「ねぇこの曲、きみ好きだったよね」
きみはまたあきれた声で、「もしもし」と口をとがらす。