Archive for 12月 2010
きみのもしもし #167
「もしもし、、、いいかな」
ちょっとさぐりを入れているようなもしもしだね。
「行きたいんだけど」
久しぶりに不安定なもしもしかも。
「もしもし、、、聞いてる?わたしの声、聞こえてる?」
「大丈夫。ちゃんと聞こえてるし、聞いてるから」
「。。。いいかな」
「行きたいんだよね」
「。。。うん」
「行っといでよ。でも間に合うかな」
「間に合うよ。ちゃんと間に合うって。除夜の鐘までには戻ってくるって。除夜の鐘は一緒に聞くんだから」
「いや、そうじゃなくて。これからきみが行こうとしているコンサート、間に合うかなって。少し走んなきゃ」
ピンチヒッターで行くコンサート、シートは前から2列めらしい。
ー好きなバンドなんだからせっかくのチャンスを逃す手はないな。
ぼくはお猪口に日本酒を注ぎながらきみとのケイタイを側に置く。
さてと、きみが戻ってくるまできみが借りてきているレンタルビデオでも観てようかな。それとも観てたら後できみにしかられるかな。
きみのもしもし #166
「買ったんだぁ」と、ぼくの方には見向きもせずに興味津々で見ているきみ。
「まぁね」と、そんなきみの反応を楽しんでいるぼく。
「ボーナス?使ったの」
「まぁ、そんなとこ」
「めずらしいね、カメラやレンズを買わないなんて」
ー買っていないとは言ってないんだけどなぁ。まぁいいや。
「わたしには何かあるのかしら」と、ニコニコしているきみ。
「あるよ」と、きみが見ていたマシンに水とカセットをセットするぼく。
「もしもし。。。それぇ?」
あきれたきみに、できたてのエスプレッソを差し出そう。
「いつでもきみにエスプレッソを」
ぼくは買ったばかりのエスプレッソマシンから絞り出された熱々のエスプレッソをきみに手渡す。
そして、オークションで落としたばかりのレンズできみを捕らえる。
「はい、初エスプレッソと一緒に、チーズっ」
ファインダーから見えるきみの瞳は、もうこのレンズにも気づいているようだ。