Archive for 12月 5th, 2010
きみのもしもし #163
きみが横で電話をかけている。
「どう、元気にしてる?」
そのあと、数回頷きながら、ケイタイをしっかりと耳に当てている。
10分くらい、続いたか。
急にきみは声を大きくし、
「もしもしっ、いいっ、ちゃんと聞いてよっ」
目は赤くなっている。
そして、
「もしもし、お願いだから」
鼻まで赤くしながら、きみは田舎のおかあさんの心配をしている。
ー大丈夫だよ。
何の根拠もない言葉だね。
だから、きみにフリースの肩掛けをかけるだけにした。
ーでも、大丈夫だよ。
そんな思いのぼくにきみは軽く微笑むと、またケイタイに「うんうん」と頷き始めた。