きみのもしもし #168
「そうだよ。両腕は後ろに大きく振るんだよ」
「そうなんだぁ」
「うん。前には小さくね」
きみは真剣に頷きながら聞いている。
「そして、足は踵からじゃなくて指から地面に着くんだ」
「小学校のときにそれ知ってれば、わたしもかけっこ好きになってたかなぁ」
きみはぼくの昔の卒業記念アルバムを見ながら、突然かけっこのこつを聞いてくる。
ーかけっこかぁ。
おや、きみがぼくを覗き込んでる。
「もしもし、でもぉかけっこ早かったの?」
懐疑的なきみのもしもし、よいところに気づいたね。
「理屈どおりにはいかないから、楽しいんだよね」
きみはぼくの返事も待たずに、またアルバムからぼくの姿を探している。
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