きみのもしもし #169
「だからね」ときみは言葉を続ける。
ぼくはきみの横でなみなみに注がれたロックグラスを傾ける。
「ちゃんと聞いてくれてるのかなぁ」
大丈夫、ちゃんて聞いてるよとグラスを置いて頷いてみせる。
「ならいいけど」ときみはピンク色のカクテルを口につける。
ぼくもまたグラスを傾ける。
「どう思う?」
「いいんじゃない」
「そう」
ちょっとだけふたりの間の時間が止まる。
「もしもし。ほんとに聞いてる?ちゃんと考えてくれてる?」
「もちろん」
ぼくはきみのカクテルグラスにぼくのロックグラスを重ねる。
ちょっとしたよい音がふたりの笑みを誘う。
「もしもし?ほんとは聞き流してるでしょ」
そんなことはないよ、とぼくはグラスの氷をカランと回す。
「ふぅん」
きみはピンクのカクテル越しにぼくを覗き込む。
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