Archive for 2月 20th, 2011
きみのもしもし #173
「時計を見るの、やめてもらえないかな」
唐突なきみからの電話。
ーいったいどうしたんだろう。
「いつもね、あなたは時計を見るの」
ーぼくは意識した覚えないんだが。
「そうだろうと思う。だから、よけい何も言えなかったんだ」
ーきみは勇気を振り絞って電話をかけてきたんだね。
「時計を見られるとさみしくなるの。
あなたはどれだけ時間を気にしているんだろう。
わたしと会っているというのに」
ーぼくはきみの前で何回時計を見ていたんだろうね。何回時間を気にしていたんだろうね。
「もしもし、でもね、いいのよ。
時間は気にしてもいいの。あなたに必要な時間なんだろうから。
もしもし、でもね、時計だけは見ないで欲しいの。
きっとよく理解できないと思うけど。
わたしはそうなの」