きみのもしもし #187
ー時間はね、大切にしないとね。
ーいつも一緒にいれるわけじゃないし。
ぼくは昨夜のきみのことばを思い出していた。
ーもしもし。
そう言ってきみはぼくに背を向けた。
猫みたいに丸めた背中をぼくに向けて、小さな声で。
ーでもね。
ーいつまでも一緒にいれるわけじゃない、そうじゃないの。
ーただ、大事な時間なんだから。
そしてきみはこちらを向いた。
どのくらいの時間をかけてきみのことばを聞いたのだろう。
ーもしもし。そのくらいわかってるよね。
ふたつの、きっと相反する昨夜のきみのもしもし。
今ぼくはもういちど、暗がりのベッドの中のきみの表情を思い出そうとしている。
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