きみのもしもし #190
初夏というある意味すがすがしいイメージの夏はどうしたんだろう。
梅雨入りは聞いたけど、梅雨明けはまだ聞いていないような気がする。
きっとそうなんだろうな。
だとするとまだ夏に突入していないことになるから、初夏なんてまだまだなんだな、きっと。
「なにをぶつぶつ言ってるのぉ。そんなの暑苦しい」
「深い意味はないんだけどさ、先週のいきなりの猛暑も今日の蒸し暑さもまだ夏じゃないってこと」
「そんなのひとが勝手に決めて勝手に言ってるだけでしょ」
勝手ではないと思うのだが。
「言われなきゃ気づかない。そのほうが問題、とっても問題、大問題」
きみはテーブルに肘を付き、くちびるをとがらせ、ぼくを睨みつける。
「もしもしっ、わたしね、今日、さっき、髪を切ってきたんだよ」
言われなきゃ気づかない大問題はぼくのことかぁ。
ー夏バージョンだね、似合ってるよ。
ぼくは逃げ場のない雰囲気の中、ますます暑さを感じている。
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