Archive for 10月 2nd, 2011
きみのもしもし #203
早朝の雨音を聞いていた。
ラジオもつけず、音楽もかけず、雨が入ってこない程度に窓を開け、
聞こえるか、聞こえないか、そんな雨音に耳を澄ましてみる。
窓から見える幹線道路にも車の行き来はなく、雨音だけが聞こえてくるはずなのに、
耳の奥では、昨夜の季節外れの花火大会、打ち上げ花火の音がこだまする。
ーもしもし、聞こえる?
今年は一緒に行けなかったきみからのメール。
隣にいないきみも花火の音が聞こえる場所にいるのかな。
ぼくはずるをして部屋からの花火を眺めていた。
雨あしが少しだけ強くなり、耳の奥から花火の余韻を遠ざける。
そして雨あしに反して空は少しずつ明るくなっていく。
ー午後には晴れそうだな。
ふとそんな気がした。
ー何時にきみを誘おうか。
ぼくは昨夜のきみからのメールを読み返しながら、そう思った。