きみのもしもし #205
「もしもし、あのね」
きみがハニカミながら、ちっちゃな声でぼくに話しかける。
「もしもし、だからね」
珈琲テーブルを挟んで、きみがもじもじしている。
きみの肩越しに見える空は涼しげに澄んでいて、その先には秋独特の薄い雲が見える。
午前中のカフェテリア、一歩だけ外に出ているテーブルには鳥のさえずりだけが聞こえてくる。
「どこ見てるの。忘れてるでしょ」
ハニカンだ表情に少しだけ唇をつきだしている。
大丈夫、覚えているよ。
「午後はゆっくり散歩しよっ。手をつないでさ」
今日はふたりが知り合った日、忘れるわけはないのにね。
「もしもしっ、もしもしっ」
きみは照れくさそうに繰り返した。
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