Archive for 11月 2011
きみのもしもし #211
ほんと久しぶりに、かつて行きつけだったバーに行ってみた。
銀座のルパンよりも古いバー。
先代が亡くなり、バーテンダーさんも何人か代替わりしている。
そしてまた代替わりをし、お店だけは脈々と続いていく。
まるでお店がひとつの生き物ののように。
「このお店の灯を消さないように、誰かが引き継いでいくんですよ」
そんな話を新しいバーテンダーさんとしながら、また一杯グラスをいただく。
ーもしもし、ひとり浸ってるでしょ。
きみからのメールも、今夜はなんとなく控えめな感じがした。
「今度は彼女と来ますね」
バーテンダーさんは笑顔でゆっくりと頷いた。
きみのもしもし #210
一晩、きみに預けたカメラ。うまく撮れてるのかな。
軽くそんな心配をしながら、
でも基本操作は事前に教えたので、実のところまぁそんなに心配もしていなく。
ただどんなタイミングでカメラを取り出して、いったいどんな写真を撮ってくるのか、
結構、楽しみにしているぼくがいる。
そんな時間をひとりグラスを傾けながらすごしていると
ーもしもし。ファインダー真っ黒、見えない。
ーもしもし。近くにピントが合わない。
ーもしもし。他の人に触らせてもいい?
いきなり三通のもしもしメール。
撮り始めたということか。わかりやすいな。
ひとつ、露出補正でアンダーになっていませんか。
ふたつ、デジカメとは言え古いレンズを装着しています。最短焦点距離は80cmです。
みっつ、よいよ。みんなで楽しみなさい。
ー了解。もう大丈夫。
カメラを構えたきみの姿が目に浮かぶ。
「楽しそうでいいなぁ」
ぼくはぼそりとひとりつぶやいた。