Archive for 12月 2011
きみのもしもし #215
表参道の雑踏、季節のイルミネーション、そして週末。
まさかこんなにまで混んでいるとは思わなかった。
「あなたは甘いっ」
きみは楽しそうに笑っている。
それでも、ふたりで少しだけ歩いたところで、
ちょっと立ち止まり、はにかんで言った。
「プレゼント買ってもらってもいい?」
たしかに手ぶらできみを待っていたぼく。
雑踏の中のカップルたちは、みんな赤とみどりの紙袋を持っている。
「。。。もしもし」
きみは小さな声でぼくを見つめる。
「いいよ。なんなりと」
見栄っ張りのぼくは胸を張って頷く。
きみにまた笑顔が戻る。
「お店、この先なんだ」
きみの満面の笑顔って、いいなぁ。
そんなきみは僕の手を引き、雑踏の中をお店に向かって、小気味好くすり抜けて行く。
きみのもしもし #214
「今年はちゃんと間に合わせる気なんだ」
住所録が映し出されているディスプレーを覗き込みながら、きみは半信半疑の顔をしている。
そんなきみを軽く無視して、ぼくはともだちの住所の確認と更新を進める。
「もしもしっ、ちょっと待って」
きみが突然ディスプレーを遮るように割り込んで来た。
そして、不満げにぼくに振り返る。
「わたしの住所、古いっ」
ーえっ。
「引っ越した先の住所、ちゃんと教えたよね」
ーこれは年賀状向けの住所録であって、それにきみには毎年ケイタイ年賀メールじゃん。
なんて言い訳は通じないか。
スマホに登録済みのきみの新しい住所、こちらでご納得いただけないかな。
そんなスマホに頷きながらも、
「それとこれとは違うのっ」
きみは自らキーボードをたたき、自分の住所を登録しはじめた。