Archive for 2月 5th, 2012
きみのもしもし #221
「来てくれたんだ」
ドアの隙間からきみが言う。
「いいからチェーン外して中に入れてもらえないかな」
ぼくはスーパーのビニール袋を、きみの目の高さに持ち上げてみる。
チェーンが外され、ドアは開いたが、
きみは首を横に振る。
「だめだよ、入っちゃ、うつっちゃうもん」
大丈夫だよ、とぼくも首を横に振る。
そして、きみの手をとり、ほっぺにキスをする。
「もしもし、ほんとうつるんだから」
「そのときはそのときさ」
ぼくは後ろ手にドアを閉めた。