きみのもしもし #230
きみが傘をさしてぼくの前を歩く。
連れて行きたいところがあるのだと、小学校の引率の先生みたいにときどきぼくの方を振り返りながら、
ぼくの前を歩く。
歩道はひとり分の幅だし、車道はそれなりに車の行き来がある。
雨の中、後ろから見てもきみはとても自慢げに歩いているように見える。
そのせいだろうか、長靴を履いたきみは水たまりをものともしない。
ぼくはと言うと、水たまりはすべて避けて歩かなくてはいけない。
すると少しずつきみに遅れを取ってしまう。
振り返るきみがひとこと、
「もしもーし、早く早く、こっちこっち」
わかってるんだけどね。
ぼくは水たまりをひょいと飛び越えてみせた。
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