きみのもしもし #233
M3ともM4とも違う、バルナック型独特のシャッター音が小気味好い。
雨上がりのお寺、空をも覆うほどの新緑、その隙間から差し込む日射し。
この静かなシャッター音は、上手にさえずり始めたうぐいすも気にならない様子。
その静寂にとけ込んだようにきみも言葉数が少ない。
「もしもし」
木漏れ日の当たる苔むしたお地蔵さんをファインダー越しに見ていると、
きみが耳元でささやいた。
「あっちの日溜まりに行くからね、わたしも撮ってね」
石段の上に見える日溜まり、黄緑色の光に包まれているよう。
ぼくはお地蔵さんを1枚撮ると、きみが向かおうとしている日溜まりに絞りを合わせた。
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