きみのもしもし #242
横に並んで歩いていたはずのきみが、後ろから声をかけてくる。
繁華街の裏通り、前からの人とぶつからないように後ろに回ったんだね。
「ここに入ろっ」
きみが暖簾の下がった古めかしいお店を指差している。
そうだね、金曜夜、予約なしで入れるお店はなかなか見つからない。
夜の曇天からぽつりとぼくの顔を濡らすものもある。
そしてかなり蒸し始めいる。
そろそろお店を決めたいところ。これだけ古めかしいと盲点かも知れないね。
「もしもし、ふたり入れますか?」
ここでもきみはもしもしを使うんだ。
そんなきみの横顔を見ていると、早くきみととことん冷えたビールを呑みたくなった。
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