きみのもしもし #261
ー先に行ってるよ。
しばらく待ってみたけど、なかなか来ないきみに見切りをつけてゲートをくぐる事にした。
ゲートの前は思っていたより混んでいて、かつ進みも悪い。
ーけっこう混んでるよ。
返事のないきみにまたメールを送ってみる。
いつもはこんなに遅れる事もないきみからメール1本送られて来なくて、返信もないのはちょっと気になるところ。
ー席で待ってるね。
そうメールを送信しようといたところで、後ろから声が聞こえた。
「もしもーし、もしもーし」
えっ。
振り返ると、おっきな声で、そして高々と手を振るきみがいる。
ゲートを抜けて、人ごみをかき分けて、きみが小走りでやって来る。
でもさぁ、きみはぼくを振り返らせるのに、どうして「もしもし」なんだろうね。
「ケータイ、忘れちゃった」
小さく肩で息をして、ちょこんと舌を出すきみ。
うーん、疑問は後で確認するとして、とりあえず開演に間に合ったから、まぁ良しといたしましょう。
コメントを残す