きみのもしもし #263
「乾杯」
赤ワインが注がれたふたつのグラス。
ぼくらはグラスを胸の高さまで持ち上げて、互いの目を見てにっこりと微笑む。
もちろん、グラスを重ねて音を立てる事はせず。
「これが正式なの?」
「レストランではね」
「?」
「そう言ったところだと、ワイングラスも高価だから音を立てて重ね合わせるのは好まれないんじゃないのかな」
「もしもし、ここはどこ?」
「きみんち」
「じゃあ、いいじゃん」
「ん?」
「このグラス壊れないから、音立てよっ」
きみの満面の笑顔が改めての乾杯を待っている。
「だね」
「でしょ」
「かんぱーいっ」
そうだね、この方がいいね。ぼくはきみの頬にキスをした。
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