きみのもしもし #265
「もしもし、どうしてわたしと一緒にいるのかな」
きみはさっき買って来たファッション誌、ぼくは大好きな写真家の写真集をそれぞれ観ていると
突然、きみが聞いてきた。
「わたしといると楽しいから一緒にいるのかな」
写真集から顔を上げてきみを見ると、きみの視線はファッション誌に向いたまま。
そのままの姿勢できみは続きを聞いてきた。
「どうしてだろう。世の中にはこんなにもきれいな女性がたくさんいるのに」
「どうしてだろうね」
「答えになってないよ」
きみはそれでもファッション誌に視線を落としたまま、ぼくの方を見ようとしない。
「そうだねぇ」
ぼくも写真集に視線を戻して、
「きっといつか、たいくつな時間がふたりを包む時が来ても、きみとならやっていけそうな気がしてるからかもね」
パラッと雑誌を閉じる音がした。
「何それ。変なの」
「うん、この感覚、変かもね」
ぼくらはちょっとだけ顔を見合わせ、きみはまたファッション誌、そしてぼくは写真集に目を落とす。
コメントを残す