きみのもしもし #269
ー雪だから丸くなってんでしょ。
ーいや、がんがんに暖房点けて背筋のばして本読んでる。
ー外は沈々だね。
ーうん、確かに誰も外出していないと何も音がしないね。
ー静かに読書?
ーそして、きみとメール。
ーわたしと電話は?
ーちょっと待ってて。
5分後ぼくらは電話で声を聞き、7分後にはFaceTimeでつながっていた。
「やっぱりね」
「そっちこそ」
ちょっと待たせている間に、きみもぼくも珈琲をいれていた。
「映像だけじゃなくて香りも届くといいのにね」
「そうだね。きっとそうなるよ、たぶん」
「きっとなの?たぶんなの?」
他愛もない会話が続く。
「ねぇ、聞きたい?」
「何かな?」
「聞かせたげる」
きみは声に出さず、口を分かりやすく動かした。
「それ口ぐせだもんね」
「わたしの口ぐせ、好きなくせに」
きみはまた分かりやすく口を動かした。
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