きみのもしもし #270
「美味しい珈琲がはいったの」
ベッドの上のぼくは、オーバーホールから戻ってきたばかりのレンズと戯れている。
「聞こえてる? 美味しいんだから」
きみの声に反応してカメラをきみに向け、ピントを合わせる。
きみは小さめの珈琲カップをトレーに乗せて立っていた。
ーうん、やっぱりボディに付けるとヘリコイドの重さはさほど気にならないな。
ぼくはそう感じるとすかさずシャッターを切った。
「もしもし、ほんと美味しいんだからっ」
きみは口を尖らせている。
ーほんといい香りだね。
今度はゆっくりときみの胸元にピントを合わせた。
「どこ狙ってるの?」
ーいい感してるなぁ。
きみはトレーごとベッドに上がり、ぼくの横にあぐらをかいた。
「レンズの確認は中断っ、はいっカメラを置いて珈琲飲もうっ」
にこりとするきみ、そんな表情もまたカメラに収めたくなった。
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