Archive for 2月 2013
きみのもしもし #275
「で、どうだったの」
きみが珈琲カップで両手を温めながら、興味深い視線でぼくを見つめる。
そんな視線で見つめられても、返答に困ってしまう。
「だからね、結果は三週間後なんだってさ」
「先生との問診とかなかったの」
「あるにはあったけど、いろんな結果は出てないじゃん」
ぼくはミネラルウォーターを口にする。
水分をたくさん取ってくださいと看護婦さんに言われた通りにがぶりがぶりと口にする。
「ねぇ、おなか鳴ってるよ」
「だよね」
「そろそろ始まる気配するでしょ。トイレ行って来なよ」
強がっても見栄を張っても健診でバリウムを飲んだ後の恒例行事は避けられない。
今日は何回こんなやりとりをするんだろう。
あえてこんな日に一緒にいなくてもなぁ。
でも、きみはなんだか楽しそうにぼくを見ている。そんな気がする。
「そうだね。でもなんだかなぁ」
立ち上がると同時にまたおなかが鳴った。
「早く早く」
ほんとなぜかうれしそうなきみがそこにいる。
pool side in winter
温泉旅館のジャングル風呂の大浴場はプール側が一面ガラス張りです。プールの水面とお風呂の水面はほぼ同じ高さです。夏は泳いでいるひとを見ながら湯当たりできます。その視界は何度行っても写真に収めたくなりますが、温泉の中にカメラは持ち込めません。でプール側からも温泉の中が丸見えではないかとずっと心配していました。今回、入浴後にプールサイドに出てみたところ、なんとプール側からは大浴場は湯気で曇っていて何も見えないのですね。逆に言うと見られていることも分からない。そんなプールサイドの様子を大浴場からはまぁこんな感じで見えているということを写真に収めてみました。よい陽気の一日でした。
きみのもしもし #274
久しぶりに何も気を使わなくてよい仲間とはしゃいでいた。
その中のひとりからシーズンズギフトのチョコをもらった。
もちろんぼくだけではなく、みんなに手渡していた。
「でも、うれしかったんでしょ」
もちろん。
「そんな顔してる」
ーだってさ、もらえるだけでもうれしいじゃん。
「まだまだ相手にしてもらえるだけでもいいよね」
そんなんだけでもないと思うけどなぁ。
「みんな、仲良しさんたちだもんね」
ーまーね。
きみは「わたしの入り込む余地はありません」って顔でテーブルを離れた。
そして、キッチンから紅茶の香りがしたかと思うと、
「もしもし、わたしのチョコのお味はいかが?」
きみはそう言って白い小皿にチョコを並べて出してきた。