Archive for 2月 2nd, 2013
きみのもしもし #272
ー片想いかぁ。
録り溜めしていたテレビドラマを観ていて、つい口についた。
片想いは切ないけれど美しい、そんなことを主人公は言っている。
美しいかどうかはさておき、そんなに切なかったかな。
いくつかの片想いを思い出しながら、もう一杯だけグラスにジンを注ぐ。
初めての片想いはいつだったっけ。
記憶は幼稚園までさかのぼる。でも切ないなんてあるわけないし。
次は小学校。これも切ないなんてなかったな。
中学校。ふられちゃったけど、きっと切ないまではなかった感じ。
高校時代もないなぁ。
大学のとき、くっついたり離れたり。離れてたときはかなり切なかったけど。
そんな話をきみとする。
「本当の片想いの切なさ、知らないんでしょ」ときみ。
そう言われてもなぁ。
「それ嫌なやつだよ。女の子にもてない。きっと相手の気持ちが分からないだもん」
きみはどうなんだろう。
少し困った顔をして微笑んでいるきみがいる。
「もしもし、わたしたちの始まりはどうでしたっけ」
ーうん。
そう言って、ぼくは思い出すふりをしながらグラスに口をつけた。