Archive for 2月 11th, 2013
きみのもしもし #273
背の低い連山がバスの車窓から見える。
威圧感はなく、優しさすら感じられる。
「おかえりなさい」
差し込む暖かい日射しにも包まれ、そんな声まで聞こえてきそうな車中だった。
ーそろそろ着くのかな。
季節外れに帰省するぼくを空港まで送ってくれたきみからメールが届く。
ーまだ空港からの高速パスの中だよ。もう少しかかるかな。
そしてまた懐かしい風景を眺めつつ、ぼくはまどろむ。
ーそろそろ着くのかな。
まったく同じメールに、ぼくは起こされ苦笑いする。
ーそうだね、次の駅かな。起こしてくれてありがとう。
ーもしもし、ちゃんと親孝行するんだよ。優しく肩でも揉んであげるんだよ。
あぁ肩を揉むなんてことすっかり忘れていたよ。
きみにもう一回「ありがとう」って返信しようとしたとき、バスの運転手さんが次の停車をアナウンスした。