きみのもしもし #279
ーわたしはひとつ渋谷寄りの駅から歩くね。
ーぼくは到着駅からだね。
ふたつの駅をつなぐように川は流れている。
その川沿い、右側と左側に歩道があり、当然それぞれの歩道沿いに桜が咲いている。
両側の桜は枝を伸ばし、川をアーチ型に覆っている。
駅を降りたところはほとんど歩けないくらいに人でごった返していた。
きみからのメールに添付されてくる写真もまずは人の頭ばかり。
それはぼくのも同様か。
どのくらい歩いたのだろう。
なんとなくさっき観ていた桜とその周辺に似通った写真がきみから送られてきた。
ーどっちの歩道を歩いているのかな?
ー右側に決まってるじゃない。人は右、車は左の日本だよ。
あれ、と言う事は。
ーぼくもきみも右側通行なんだね。
ぼくは立ち止まり左斜め後ろを振り返る。
そこにはぼくを見つけて大きく手を振っているきみがいた。
あぶない、あぶない。危うくひとりで全部の桜を観終わるところだった。
「ねっ、行く?戻る?」
そっか、出会ってからの行動を決めてなかったね。
ぼくらは声を出して笑ってしまった。
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