きみのもしもし #283
きみは真新しいペンを手に入れたようだ。
「これね、万年筆のインクを使うローラーボールペンなの」
それが何を意味しているのか、ちゃんと理解しているかな。と万年筆使いのぼくは思う。
「インクのカートリッジを変えて、気分次第の色で書けるボールペンってことよ。それも万年筆のインクで。ね」
手帳を開いて、さらさらとペンを走らせるきみ。楽しそうだね。
そしてそのペンをぼくに手渡す。
書いてみてよと新しいページを開いて手帳も差し出す。
いいよ、とぼくはまずボディの手触りを確認する。
重さも手頃だ。きみの手帳にHelloと書いてみる。
「書き心地はいかが」
「うん、悪くない」
「・・・もしもしっ。何それ」
「あっ」ぼくは頭をかきながら
「うん、なかなかいいね」と正しい言葉に言い換える。
「でしょ、でしょ、でしょ」ときみは上機嫌。
「お気に召した?もうすぐ誕生日でしょ。差し上げますっ」
「えっ」
きみは覗き込むようにぼくを見ている。
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