きみのもしもし #284
春雨の今日、小学校の頃を思い出した。
雨の日、傘もささずに、水たまりに長靴でばしゃばしゃと入り込む。
そんな下校だったな。
「風邪とか引かないわけ?」
朝からの雨で急に気温が先月に逆戻り、きみは片付けそびれていたぼくのフリースに包まっている。
「その頃は今と違って子供は風の子、そのまんま。だから風邪なんて引かないよ」
「それってこじつけじゃん」
でもほんとに風邪なんて引かなかったんだよ、そのくらいじゃ。
「楽しかったんだろうなぁ、あのときって。お袋から叱られるのも気にしなかったしなぁ」
「やんちゃだったんだね」
ほんと楽しい思い出がいっぱいだな。
ぼくは窓から見える新緑に降り注ぐ雫を通して少し思いを馳せる。
「もしもし、そんな思い出にわたしも入れてよ」
きみはぼくの肩にフリースをそっとかけてきた。
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