きみのもしもし #287
クラシックで無骨なロックを聴きたくなった。
鮮やかな新緑の木陰のベンチできみを待つ、そのちょっとした時間。
かなり無性に聴きたくなった。
きみが時間に遅れているというわけでもなく、どちらかと言えばぼくが早く着きすぎている。
そんな時間を使って曲をダウンロードし、イヤフォンを耳に入れる。
「わたしにも聴かせてよ」
すごいタイミングだな。きみは現れたかと思うとぼくの横に座る。
そして、ぼくの左耳のイヤフォンは、きみの右耳のイヤフォンとなる。
その動きの中できみの髪の香りがぼくの鼻先にふれた。
いい香りだ。
「もしもし、いい香りでしょ、好き?」
えっ。
きみはぼくの思っている事が分かるのかな。
「いい曲じゃん。どこのバンド?」
少し驚いているぼくにきみはさらりと次の問いかけをしてくる。
きみも少し照れているのかな。
そんなきみにぼくは答える。
「かなり古いバンドだよ。でもビートが効いてて好きなんだよね」
ふぅんときみが少し動くと、きみの香りがまたぼくの鼻先にふれた。
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