きみのもしもし #289
「もしもし、遅れちゃ失礼だよ」
枕元のスマホが着信を知らせる。
今朝は珍しくメールではなくて、きみの肉声で起こされた。
10年ぶりだろうか、今日は懐かしい友人とランチを取る。
いつもの週末より少しだけ早起きが必要だと、昨夜きみに伝えておいた。
「もしもし、飲みすぎもだめだよ」
以前の記憶があるのだろう。
確かにあの頃は昼間から夜遅くまで飲んだりもしてたね。
「もしもし、寄り道しないで帰るんだよ」
ーでもね、寄り道はしちゃいそうだな。
きみの声を聞きながら、きみの笑顔が妙に懐かしく思えてきた。
昨日会ったばっかりなのにね。
唐突な返事にきみの頭の上にクエスチョンマークがいくつか浮かんでるんだろうね。
ーでは、ちょっくら行ってきます。
ぼくはもそもそとベッドから起きだした。
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