きみのもしもし #295
先日きみから送られてきた週末のみ有効な回数券で電車に乗った。
乗る前に切符の自販機の上に表示されている乗車区間を確かめた。
そして手元の回数券の金額を見る。
なるほどね、ぼくは納得して電車に乗り込み、ぼくの駅からこの回数券で行ける駅に向かった。
ー回数券で乗ったら、この駅で下ろされた。
改札を出て、きみにメールする。
ー下ろされたんじゃなくて、わたしに会いたくて降りたんでしょ。
にっこりマークの絵文字が入った返信がすぐさま届いた。
ーきみが届けた回数券じゃあ、ここまでしかこれないよ。
ーうぅん、ここまでしかこれないんじゃなくて、ここまで来れるのよ。
今日のきみからの返信はいつになく早い気がする。
ーじゃ、わたしんちまでいらっしゃい。
今日はきみに操られてるみたい、でもそれもいいか。
ーもしもし、そしてね。
ここで一旦メールが途切れた。
ぼくは続きが知りたくて、スマホの画面を見入ったままきみの家まで歩き始める。
ーゆっくりしよ。寝てもいいのよ。わたしのひざで質の良い睡眠に誘ってあげる。
ぼくは立ち止まり、あたりを見回してしまう。
誰もぼくのスマホを覗き込んでいる訳でもないのに、ぼくはちょっとどきっとし周りを見渡した。
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