きみのもしもし #297
目抜き通りを肩が触る感覚で散歩していると、
「日焼けしちゃった。やだなぁ」ときみがぼくに腕を見せる。
「健康的でいいじゃん」とぼくは軽く受け流す。
「今はいいんだけどさ。何年か後にシミになるんだよ」
そんな先のことより、今健康的に見えてほんとにいいんだけどなぁ。
「だめよ」
きみは肩からかけたトートバッグからおもむろに何やら取り出す。
それは真っ黒な日傘。
「そんな不思議そうな顔しないでよ」
最近の女子は日傘を持ち歩いてるのかな。
みんな、バッグに潜ませてるのかな。
「もしもし」
ぼくはかなり不思議そうな顔をしたんだろうな、
きみは何か言いかけて、いつものもしもしで言葉を止めた。
そして少し間を空け、たぶん言葉を変えてぼくに話しかけた。
「もしもし。大人の女性って感じしない?」
日傘を広げてくるりと一回転するきみには、まだ少女っぽさが残っていた。
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