きみのもしもし #300
今年も川向こうで号砲が鳴った。
もうすぐ夜空を彩る花火が打ち上がる。
毎年この花火大会は直前に夕立が来てやきもきさせられる。
今年は夕立と言うよりは、ゲリラ豪雨が心配だった。
すでにいくつもの有名どころの花火大会は豪雨で流されている。
でもまだ明るい空に夏特有の入道雲もなければ、豪雨を想像させる黒雲も見当たらない。
薄くて白い雲が空全体を覆っているが、全体的にはさわやかな青い空だ。
今夜、きみは花火大会を兼ねてぼくのところにやって来た。
ここで着替えるんだと、なにやら色彩鮮やかな風呂敷袋に着替えを詰めて。
夕ご飯は花火大会の後だと言う。
花火はできるだけ川に近づいて観る、でも群衆からは少し身を引く。
そして終わったら余韻を楽しみながらのお散歩。
今日は少し風もあり、お散歩も涼めそうだ。
「もっしもしっ。そろそろ行こっ」
着替えの終わったきみがぼくの部屋をノックする。
そっか。
今年初めての浴衣姿、なかなかいいものですね。
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