Archive for 9月 8th, 2013
きみのもしもし #303
ーもしもし。
と、きみがつま先でぼくの右足をつつく。
カウンターに並んで、ふたりして深夜の珈琲。
「何になさいますか」とのバーテンダーの問いかけにふたり口を揃えて珈琲と答えた。
「ぼくは苦めの。きみは」
「わたしはまろやかなのをお願いします」
静かに頷くバーテンダーさんはほどなく香りよい珈琲を出してくれた。
ー美味しいね。
ーうん。
一軒目で焼き鳥を食べて、二軒目でカクテルを飲んで、ここは三軒目。
ーもしもし。
またきみが右足をつつく。
ーそろそろ終電なくなるのかな。
ーぼくの終電は今出たくらいかな。
ーそう。
きみは少しだけぼくの右肩に寄り添った。