きみのもしもし #306
話に返事をしながらも、きみはキッチンに立っていた。
会話のやりとりに違和感もなかったのでそのまま何気に話していると、いい香りがリビングを満たす。
おや?珈琲の香りだ。
きみはどうもコーヒーメーカーを使わず、ドリップ式でお湯を注いでいるようだ。
会話が途切れたからか、
「飲むでしょ」
とキッチンから今更ながらに聞いてくる。
「もちろん」
ぼくは二つ返事できみのいれてくれる珈琲を待つ。
目をつむり、差し出された珈琲の香りを楽しんでいると、
「もしもし、新しい豆だってわかったぁ?」
きみは自慢げにぼくの前で腕を組んでいた。
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