きみのもしもし #310
きみに笑っていて欲しいんだ。
どんなときでもきみを笑わせてあげたいんだ。
そう思うのは簡単なんだけど、
でも、きみに笑っていて欲しいんだ。
「何か言ってくれそうだけど」
きみが一生懸命笑顔を繕っている。
「今は何も言ってくれなくてもいいからね」
きみのくちびるは少し震えている。
「も少しで元に戻るから。大丈夫だから」
ぼくはゆっくり頷きそっとと立ち上がり、珈琲を入れる。
お湯を沸かして、豆を挽いて、そしてきみの方に振り返る。
「もしもし、やっぱり」
「うん、わかった。何か話をしたげるよ。どこにでもあるふつうの話」
きみは少しだけ微笑んだ。
その拍子に流れた涙をきまり悪そうに拭き取るきみがいる。
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