Archive for 11月 2013
きみのもしもし #314
「ねぇ、何時?」
自分の腕時計に目をやり、きみに答える。
そのとき、きみも腕時計をしていることに気がついた。
「ん?これ?」
時計は止まっていた。電池切れだと言う。切れているのは知っていてその腕時計を付けているらしい。
「ブレスレットの色とね、合う時計がこれしかなかったの。黒いブレスレットに黒い文字盤のこの時計。時計自体も小さいし、止まっていること誰も気づかないでしょう」
確かに、言われてみなければ止まっているなんて分からない。コーディネートは重要ってことだね。
「もしもーし、それにね、時間はあなたに任せておけば大丈夫でしょ」
きみはゆっくり頷いた。
そんなに時間を頼られてもなぁ、
ぼくは苦笑いをしながら頷いた。
きみのもしもし #313
ーもしもし、もう着きますよ。
そんな夢で目が覚めた。
何がどうなっていて、どんなストーリーだったのか、まるで思い出せないが、
きみのそんな一言が夢に出てきて目が覚めた。
優しい感じだったのか、強く起こそうとしていたのかも、わからないけど、
ゆっくりと目覚めたのだから、きっとやさしい感じだったんだろうな。
飛行機の窓のブラインドを開け、外を見てみると街並が小さく見えている。
もうそろそろ着陸するんだな。
そう思うのと同時に、機内アナウンスが着陸態勢に入る旨を告げる。
空港に着いたら、いの一番できみに電話しよう。きみの夢をみていたよと教えてあげよう。
そんなことを思っていた僕は、まさかきみが空港まで迎えにきているとは知る由もなかった。