きみのもしもし #318
ワムとマライアキャリーのクリスマスソングが街のいたるところで流れている。
ぼくもふとした瞬間に達郎を口ずさんでいたり。
今年もまたそんな季節だ。
「今年はね、わたしの部屋でクリスマスしょっ」
なんでも、部屋を模様替えしたと言う。
本棚の位置を変え、ベッドは窓側へ。
いつの間にそんなことをやったんだろう。
そんなそぶりをきみはまったく見せなかった。
「ちょっとしたクリスマスサプライズかな」
けっこうな労力がいるだろうに、きみはさらりとそう言って退けた。
「んーっ、少しだけ筋肉痛かな。だからね」
せっかく模様替したんだから、ごちゃごちゃ言わずに見に来なさいとでも言うように、
きみはちょっとだけ強引にぼくを誘う。
「もしもし、プレゼントは忘れずに」
そう付け加えるのも忘れない。
了解、もちろん忘れちゃいないけどさ。
けど、毎年迷うんだよね、きみへのプレゼント。
それは飲み込んで、ぼくは「大丈夫だよ」と大きく頷いてみせる。
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